ただ好きだという、この気持ち。

□ ビターエンド □

ビターエンド(60)

「五年前・・・?」
 一方の忍足は、まるで話の方向が見えない。戸惑っている様子が露わだったのだろう、佐上は唇の端をわずかに上げた。とはいえその表情は、笑顔とは到底言い難かったけれど。

「そりゃ、今までにもさんざん思い知らされてたし、仕方ないって俺も諦めてたよ。でも、今みたいに言われたら腹が立って腹が立って、もう無理だ。ちょっとは俺の立場になって考えてみなよ。既に聞いてた話を深刻そうな口調でもう一回打ち明けられたり、それが理由で別れること確定になっちゃってたりしたら、あんたどんな気分になる?」
「・・・待ってくれ。五年前って――既に聞いてた話、って、」

 どういうことなんだ、と何とかそこまで問いを発した忍足を、佐上はますます睨みつけてくる。
「言ったとおりだよ。あんたと俺は五年前に一度、会ったことがある。・・・正確には、二丁目で酔いつぶれる寸前になってるあんたを、俺が引っかけたんだけど」
 佐上が挙げたバーの名には、忍足も覚えがあった。稔が忍足の元に身を寄せた頃、行きつけにしていた店だった。

 稔の死後、忍足は地元に戻らざるを得なくなった。一年半のちには何とか、東京に再び戻って来ることができ、その店にも一度顔を出した。だがそれ以降は、いろいろ思い出したくなくて、自然に足が遠のいていた。

「ああ、あの店・・・今もまだあるのか?」
 そんなどうでもいいようなことを訊いたのは、混乱している証だった。佐上にもそれは伝わったようだったが、勿論容赦などしてくれなかった。
「去年潰れた」
 にべもない返事の後、佐上は険のある口調で――だがやはり要領よく明快に――「五年前のあの時」のことをまくし立てた。そうして忍足を更なる混乱と動揺の渦に放り込んだ。

「え、と・・・悪い、確認させてくれ」
 半信半疑のまま、それでも忍足は何とか頭を整理しようと試みる。
「・・・五年前、バーで酔いつぶれる寸前になってた俺におまえが声を・・・その時が、本当は初対面だったのか? 今年に入ってからじゃなくて?」
「そうだよ。あんたにはとってはどうだか知らないけどね」
「で・・・その時俺は、ものすごく個人的なことを、初対面のおまえにべらべらと・・・」
「ラブホに移動してからだけど。あと、その時点では弟さんはまだ健在だった。だから、弟と泥沼になってるんだってことと、そうなるに至った過程と、あと弟に何て言い聞かせてコトに及んでるかってことを、まあそうだね、べらべらと」
「・・・・・・」

 言葉もなく頭を抱えた忍足へと向けて、佐上は冷たい口調で言う。
「何しろその時のあんた、かなり参ってたから。挙げ句、言うだけ言ったらコテッと寝ちゃって。放っとくのも心配で、どうしようかなと思ってるうちに俺も眠り込んじゃって、起きたらあんたは一万円札一枚残していなくなっててさ。その時はそれっきり」


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Date:2017/04/19
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Comment:2

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2017/04/19 【-】  # 

* Re: ギューして!よしよしして!(´;ω;`)

hちゃんこんにちは~♪

近頃、何十回目かの萩尾望都ブーム(十代の頃から、割と定期邸に巡ってくるのです)が訪れてまして。
今回は、既に持っているコミックスを読み返すだけでは飽きたらず、久々に新規で購入して読んでます。
その中のひとつが「レオくん」。シマシマ猫のレオくん(二足歩行)が、人間界のいろんなことを体験してみるお話なのですが!

レオくんは猫だし、まだ子供だから。いろいろと失敗しちゃうわけです。
小学校に行きたくて、おかあさん(飼い主)にランドセルを作ってもらって、鉛筆と消しゴムと300円(授業で使うおはじきを買うお金)をランドセルに入れて、お隣の子と一緒に出かけるお話が第一話なのですけどもね。
購買におはじきを買いに行った筈が、目移りしまくって、バナナのにおいのする消しゴムとボールを買っちゃったりね。
授業でみんなと同じようにしろと言われてもボールが気になったりトイレに行きたくなったりね。

その都度先生に注意されて、おはじきも言われた通りに並べられなくて、挙げ句箱ごと落っことしちゃったりね・・・。
そういうレオくんの仕種はいちいち可愛いんだけど、でも見ていて可哀想でつらくて悲しくて、つい傍らで寝ているとらを撫でまくったりしてしまう私なのでした。
レオくんは給食が食べたかっただけなの。特にプリンが(; ;)

↑そんなレオくんの姿が自分と重なって、余計に悲しい・・・←更年期ですよ
でもでも、私もブラインドタッチの練習がんばる! レオくんみたいに、美味しいもの一口食べるごとに悲しかったことは忘れるようにしてがんばる! hちゃんもギューしてよしよししてくれてるし!

ダダダダニ! ひえ~、恐ろしい!!
うちはどうだろう・・・食害みたいなのは今の処あんまり見受けられないんだけど、でもいそうだわ~(><)
そういや一時期ヒーッてなってたウドンコ病は、いつのまにか終息してた・・・。けどこれからまた起こるかもですね!
毎日の観察が大事(`・ω・) あと、ダニは私も、鉢を雨に当てることで駆除したいと思います☆

さてさて、佐上先生は、そうなのです実は・・・。
まあ、その時の忍足先生は泥酔していたので、話をしたといっても肝心なところが抜けてたりもしてるんだけどもね。
でも、きっとそうだね。忍足先生も野生のカンで、こいつにならって思ってつい話しちゃったんだね~(´;ω;`)

そんなこんなで佐上先生も、実はいろいろと複雑な気持ちでここまで来ていたのでした・・・。
「あんたには俺みたいなのの方が似合う」とか、身食いの話とか、ちょっとずつ小出しに・・・いや小出しすぎて判らんて・・・。
かくて佐上先生の打ち明け話はまだ続きます。明日も宜しくです!
2017/04/19 【なか】 URL #CRMl/nHo [編集] 

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