ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

the five senses-2 心音に寄り添う(1)

 食事は外に出て、地元名物の手羽先とビールで乾杯した。
「旨いなあ。医局へのおみやげもこれにするかな。ほら、持ち帰り用の冷凍パックもあります、だってよ。日時指定のクール便で送って、すぐに食べたい奴には長谷川が医局のレンジでチンしてやるってのはどうだ」
 ご満悦の向井にビールを注いでやりながら、長谷川も自然に顔がほころぶのを感じる。それでいて、口についた出た声音は我ながら淡々としていた。
「別にチンするのは構いませんけど。でも、もっと普通のにしましょう。煎餅とか」
「黒い缶に入ってるエビの、あれかー? まあ、あれも好きだからいいけど」
「軽いし数がたくさん入ってるし個包装だし、おみやげ向きですよ。手羽先は先生の自宅用にしてください」
 というか先生はいつも自分の好物をおみやげにしてるんですか、と突っ込んだ長谷川に対し、向井は大真面目で頷く。だって旨いものの方がいいだろ、というのがその言い分で、長谷川は微笑せずにいられない。こういう処はこの人、とことん子供っぽいんだよな。

 一方の向井は頬杖をついて、箸休めの酢の物をつついている。テーブルに載っている皿はどれもあらかた空になっていたが、そのいずれにも玉ねぎは入っていなかった。向井は安心しただろうけど、長谷川としてはちょっと寂しい。
「うーん、やっぱり手羽先はいいや。一人で食っても味気ないし」
 あっさりとした口調で向井がこう言った、その瞬間。
 長谷川の中で何かが切り替わった。
「・・・部屋に来て料理してくれたり、一緒に食べてくれたりする人、いないんですか?」

 さりげない口調で言ったつもりだったが、視線は自分の取り皿の上に落ちてしまった。向井がちらっとこっちを見たような気もしたが、・・・いや、きっと気のせいだ。
 どうしよう、と長谷川はそっと膝の上で拳を握る。・・・顔が上げられない。
 と、その時。
 伏せたままの長谷川の視線の前に、箸の先が侵入してきた。かと思うと、長谷川の皿から手羽先の最後の一切れを掠っていく。・・・あ、

「料理はともかく、一緒に食べてくれそうな奴には心当たりあるけどな。でも時々自信なくなるよ。俺は実は遊ばれてるだけなんじゃないかって」
「・・・そ、んな・・・ことは、多分、ないです」
 やっとのことでこう言ってから。
 勇気を出して、ちらりと視線を上げてみた長谷川だったが、その途端にこっちをじっと見つめている向井の視線とぶつかって、ドキリとする。
「多分?」
 不気味なほど静かな声音で反問されて、長谷川ははじかれたように顔を上げた。だって、と弁解口調で言いつのってしまう、
「判らないじゃないですか。先生の言う心当たりっていうのが誰か――なんて、僕には、」
「・・・へえ」
 
  ぼそり、と一言だけ返されて、長谷川の心臓がまたドキリと跳ねた。なんか俺、本格的にしくじった・・・かも。鼓動の速度がじわじわと、しかし確実に上がっていくのを自覚する。
「判らなきゃ判らないでいい」
 そして向井はこう言い捨てるなり、伝票を取って立ち上がった。
 



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Date:2014/06/25
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2014/06/25 【-】  # 

* Re: koさまv

ぎくしゃくする二人、が書きたくて書いた回です(^^)
真空パックされた手羽先って、職場のおみやげには最も向いてないですよね(^o^)
1本ずつ配るにしても、高くつきすぎる。第一、そう、ビール飲みたくなる!
なーーんにも考えてない向井センセならではの発想です。
この人の価値観は、「自分が旨いと感じたかどうか」ですので。アホ・・・。

そ・し・て、明日はまだ♥は付きませんが、物語はその方向に進んでいきます。
そう、「判らせてやる」ですよ! キャアー!(///ω///)
・・・てなわけで、明後日からは続けて♥が付きそうなんですが、OKでしょうか(^^;)
2014/06/25 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/06/25 【-】  # 

* Re: 大丈夫!

ええ、きっと大丈夫ですとも! 伊吹某とかで鍛錬していただいてますから(^o^)

ていうか、伊吹某に比べると、こっちの2人はやっぱりプラトニック寄りっていうか。
なんか可愛いです。♥の回も。
やっぱり、男×男っていうハードルをひとつ噛ませてるせいですかねー。

良く悪くも現実主義者の向井センセはともかく(苦笑)、長谷川センセはいろいろ考えちゃうみたいです。
2人の関係がどこまで進んでも、やっぱり不安っていうか。いつ終わっても仕方ないって覚悟してるというか。
そういう葛藤というか、儚さがBLの醍醐味ですよね~♪

で、そうなんです、何だかたくさん拍手いただいてしまってて、あれれ・・・って感じで(^^)ゞ
この調子で進めていいということね? と勝手に解釈して、しばらく連日更新します♪
なるべく長く書き続けたいなー。私もこの2人、大好きですv

あと生検。はい、何とか無事、組織を採ってもらいましたー♪
入院中にも別の箇所で1度やってたんですけど、今回はその時よりしっかりガッツリ、広めの面積で採られまして、絆創膏もでかいです。そして肩口が微妙にチカチカ痛いです(´・ω・`)
来週の月曜が抜糸でございます。また病院に行くんですけど、もう向井先生や長谷川先生に会えない(外来に出てないから)のが寂しいです。しょぼん。
2014/06/25 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/06/25 【-】  # 

* Re: 皮膚生検はですね

局所麻酔をかけて、かさぶたのある部分ごと、皮膚自体をメスで切り取っちゃうんです。
その傷跡は、傷の長さだけYの字がずらずらと並ぶみたいな方法で縫ってあるので(同意書兼説明書によると)、抜糸が必要になるわけです。
ちなみに抗生剤も出ました。フロモックス3日分、飲みきり終了。

で、今回は面積だけじゃなく、深さもそこそこしっかり採ったみたいで、二重に縫合してあるんですって。
抜糸って聞くと、ピーッと糸を引っ張るみたいなイメージがあるので(いつの時代の人だ私)、痛そう~って思っちゃうんですよね。ドキドキ。

皮膚生検の日、入院していた某診療科の診察もあったんですが、その時診察室で待ち受けていたのはメインの主治医の桂吉弥先生(仮名)と、何故か野間口先生(仮名)でした。
野間口先生、採血にトライしたんですけど失敗。桂先生に取り直されました。
私の血管は「逃げる」らしいです。やだわー、おばあさんみたい(´・ω・`)

次回(7/2)は教授の外来に行くんですけど、向井先生とか長谷川先生とかいたらどうしよう!(//o//)
確かに挙動不審になってしまいそう~。
♥の回、今まさに原稿中です♪
2014/06/25 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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