ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

ワンダフルライフ(87)

 口を開きかけた向井の腕に手をかけて止めると、長谷川は葉子を見上げた。軽く息を吸い込んでから、言葉を紡ぎ出す。
「そうだよ。その両方」

 自分を問い質す。ここに来る前に俺は何て思ってた? と。
 向井先生のことを守るって。俺が守るって、先生にもそう言った。
 なのに実際はどうだ? 今までのところ、俺は向井先生に守られてばかり――助けられてばかりだ。
 せめて、ここからは、

「向井先生のこと、俺はすごく誇りに思ってる。この人を好きになったことも、この人に選んでもらえたことも、今こうして隣にいられることも全部。でも、」
 喉が震えて、長谷川は咄嗟に言葉を切ると口を閉じた。唾を飲み込もうとしたが、口の中はカラカラに乾いていて、うまくいかなかった。
 仕方なく、短く息をつくだけにして、長谷川は再び声を振り絞った。
 膝の上に置いた両手をぎゅっと、固く握りしめながら。
 
「俺を選んだっていう、その一点だけで、向井先生は全否定されてしまうかもしれない。一度そうなったらもう、ひととなりも仕事ぶりも、何もかも関係なくなるんだ。そんなのは・・・おかしい」

 息を、今度は大きく吸う。
 胸を張ろう、と思った。否定されっぱなしで終わらず、卑屈にもならず、対等な立場で誠意をもって、自分の気持ちを伝えよう。
 先刻、向井先生がそうしてくれたように。

「向井先生は言ってくれたんだ。家族から俺を奪うわけにはいかないって。そのために自分のできることをしたい、って。そういう人を、俺は好きになったんだ。それを判っておいて欲しいんだ、みんなにも。感情論とか偏見とか、そういうのは一旦置いて、公正に、向井先生って人を見て――ちゃんと知ろうとして欲しい」

 そうしたら、と長谷川は、真剣な顔のままで言ったつもりだった。だが気がついたら、微笑んでいた。
 続く言葉を紡ぐ唇も、家族を見やる眼差しも。
「そしたらきっとみんなも、好きになるから。向井先生のこと」

 隣で向井が、ふ、と微笑った気配がした。
 ちらりと見やった横顔は、それはどうだかな、と言っているようでもあり、みんなにまで好かれなくても別にいいよ、と言っているようでもあった。
 応えて長谷川も小さく微笑った、その時。


→ BACK
→ NEXT

にほんブログ村 トラコミュ 大人のためのBL、MLへ
大人のためのBL、ML
にほんブログ村 トラコミュ オリジナルBL小説・・・ストーリー系へ
オリジナルBL小説・・・ストーリー系



*拍手クリックで御礼SSに飛びます。
ぽちっと楽しんでいってくださいませ♪

*このお話が気に入ってくださった方はこちらも是非ぽちっと♪
ありがとうございます、大変励みになってます!

*    *    *

Information

Date:2018/05/08
Trackback:0
Comment:2

Comment

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/05/08 【-】  # 

* Re: がんばったちわわ!

hちゃんこんばんは~♪
お局への呪い、もとい、祈りをありがとーう\(^o^)/
おかげで今日は、よくもないけど悪くもない1日でした(笑)
しかし、もう雨は降らないと思ってたのに、帰り道の只今現在、結構降ってます。しょぼん。

恋人ポッキー! スーパーにいた! 名前もちゃんとあるんだねー、なんかすごいわ(^^;
最近は飲食物もこうやってキャラ付けしないといけないのかね~。企画会議大変だろうね、おっさんたちは(^^;;
私はもう、おいしかったらそれで・・←乾きすぎ

さてさて、今日は長谷川先生、がんぱりました!
けど最後の方は、何言ってるか自分でもわかってなかったよ、あれはきっと(笑)
みんなが好きになったら困るじゃんね♪
ま、向井先生のラブは長谷川先生だけのものですが!ウフフ♪


2018/05/08 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://kisschoko.blog.fc2.com/tb.php/1411-bd957959
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)