ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

ワンダフルライフ(115)

 そんな長谷川を、忍足はしばし見つめ――それから、ふっと口の端だけで笑った。
「ま、親といくらうまくいっても、向井と別れちまえばそれまでなんだから。どうせ頑張るなら、そうならないように頑張りなね」
「はい」
 それはそうだ、と、これも素直に思い、長谷川はおとなしく頷いた。そうして、軽い会釈を残して、忍足の前を辞去した。
 
 向井と別れる日は、それがいつかは判らないけれど、将来必ずやってくる。人間はいつか必ず死ぬのだから。
 この仕事をしていると、嫌でも思い知らされる。死は万人に平等で、尚且つ容赦ない。それは長谷川にもよく判っている。
 だからこそ。

 今、共に過ごせる時間を大切にしたいと、長谷川は思う。
 向井のためにできることを探して実践しながら、同じ歩幅で歩いていきたいと願う。
 彼の両親に会うことも、或いは会わないでいることも、そのひとつだ。
 自分の自己満足や承認欲求を満たすためではなく、ただ、向井の気持ちに寄り添って。無理をせずに、小さなことから日々、ひとつずつ。

 差し当たり、寒がりのあの人に風邪を引かせないように。防寒と、栄養ある食事の提供を心掛けていこう。
 そんな決意のもと、日常へと戻っていこうとしていた長谷川だったのだが。

 最後の一波乱が訪れたのは、そんな矢先だった。
 それは一通の紹介状を携えた患者という形で、長谷川の外来へとやって来た。否、問題は患者ではなく、付き添ってやってきた白衣の女性だった。
 黒髪をきちんとまとめ、可愛いというより綺麗な顔立ちにごく薄い化粧を施した、年頃は長谷川よりプラスマイナス一歳という辺りの――

「菊池医院の菊池泉と申します。この方は父の患者さんで、紹介状と検査データも持参しましたが、口頭でもご説明します。A型インフルエンザ陽性でタミフル内服二日目、熱は下降傾向ですが、神経症状が出てきています。ご本人はこの通り既に歩行もおぼつかなく、昨晩から食事も摂れていません。ご家族も日中は仕事で付き添えないとのことで、私が付き添ってきました。入院精査が必要と考えますが」

 菊池泉、女性、開業医の娘で本人も医師。
 断片的な情報が長谷川の中でひとつにまとまり、記憶を呼び起こした。
 写真館で撮られた、立派な表紙付きの見合い写真に収まっていたダークスーツの女性。
 その人が今、長谷川の前にいた。


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Date:2018/06/05
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2018/06/05 【-】  # 

* Re: 毛と口唇ヘルペスと美人女医

hちゃんこんばんは~♪

hちゃんの毛劇場、ステキだっだー! 向井先生も長谷川先生も、それすごく言いそう! 爆笑した~(≧∇≦)
向井先生も、そうだよね、一人だけ原始人みたいでちょっと気がひけるわよね(*´艸`)
でもお手入れしたらちわわが泣いて怒るから! ここは男らしく、堂々と毛を晒していただきましょう☆
(それに多分、毛並みは人並み程度かと・笑)

口唇ヘルペス疑いはですね、相変わらずポチッとなんかある程度で、違和感もなくなりました~(^^)
だから痛かったのも最初の時だけで、それも神経に直接ピリピリ来るほどのものでもなく・・・だからやっぱり単なる虫さされかもしれない(^^;)
でも虫さされにしても、今までの感じと違うのよね~。
まあ、ごく初期に気づいて、それなりに適した塗り薬を塗ったおかげ? と思うことにします。しばらく真面目に薬を塗るわ!

さてさて今日は、今シリーズのラスボス・美人女医の泉ちゃんが登場してまいりました♪
この泉先生、実は遙か昔、司先生の恋物語を書こうとした時のお相手キャラだったりします(笑)

その時は、そう、相手はちゃんと(?)女の人でね(^^;)
腕利きで頭がよくてテキパキハキハキしてる、気の強い美人♡ 診療科(明日出てきますよー)も同じ。
ちなみにその時は、破局で終わりました。脳内から出ることはなかったけども。司先生がフラれておしまい☆

キャー、長谷川先生も毛に気を取られてる場合じゃないわよ! ガンバレ~!
2018/06/05 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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