ただ好きだという、この気持ち。

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◆ありふれた風景23(6)◆

「だろうけど、じゃなくて、大丈夫なんですよ」
 今度こそ向井は鼻で笑い、それでも長谷川に従って素直に腰を上げた。
 まだ少し熱いカップを長谷川の手から取り、空いた手には自分の分の空のカップを持って、返却口経由でさっさと自動ドアへと歩いていってしまう。

 長谷川は佐上たちの方へとぺこりと一礼すると、向井の後を追いかけて店の外に出た。
 その向井はというと、持って出た長谷川のコーヒーを仏頂面のまま飲んでいた。
「向井先生、」

 長谷川がそっと呼びかけると、向井はぶすっとしたまま、中身が三分の二に減ったコーヒーカップを長谷川に押しつけてきた。
「まだ少し熱いぞ。気をつけろ」

「・・・ありがとうございます」
 両手でそれを受け取りながら、長谷川は向井を見上げて微笑う。
 ん? と見下ろしてきた向井の視線を受け止め、心からの気持ちを声にこめる。

「すごく嬉しかったです、向井先生がすぐ来てくれて。・・・忍足先生にかまけて帰りが遅れた僕を、怒らないでくれたことも」

「俺の方こそ、おまえに怒られると思ってたんだけど。佐上に喧嘩売るなんて大人げない、っつって」
 向井の言葉に首を振ると、長谷川は両手で持ったカップに口を付けた。
 確かにまだ少し熱かったけれど、無理してごくりと飲む。

「僕だって怒りません。あんな嬉しいことを言ってもらったら、怒れません」
「そんな嬉しがらせるようなことを言ったか?」
「はい。・・・ちゃんと手綱締めろとか、可愛いのはうちの長谷川だとか」

 ふん、と向井は鼻を鳴らす。歩道の端に寄り、空車のタクシーを探しながら、独り言のようにしてこう言う。
「実際そうだからな。佐上にしっかりしてもらわなきゃ困るんだ」

 長谷川は頑張ってコーヒーを飲み干すと、向井の傍に寄り添った。
 何とはなしにクスクス笑ってしまい、怪訝そうに見下ろされて、慌てて理由を探す。

「あ、その・・・佐上先生のことも呼び捨てなんだな、って思って」
「忍足のことも呼び捨てだからな。平等に」
「そっか。そうですね」

 空車のランプを灯したタクシーがやって来て、向井の手に応じてハザードランプを点滅させた。
 さあ帰ろう、と長谷川は思う。向井先生と一緒に、向井先生と暮らす部屋へと。

 ペット禁止の賃貸だけど、あそこが俺と向井先生との愛しの我が家だから。


end.


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Date:2018/06/24
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/06/24 【-】  # 

* Re: 超サマになってると思われます>鼻で嗤うの(^o^)

hちゃんこんにちは~♪

 あああ、拍手SS再録、もう1シリーズ続きます! 新作もうちょっと待ってくだされ!(><)
 梅雨から夏にかけてのこの時期はやっぱり、だるだるになっちゃってダメだ~。
 マツコが以前テレビで、最近は6月から10月頃まで暑い日本の気候について「だから5ヶ月日本が嫌いよ」と吐き捨ててましたが、私も同じく吐き捨てたい。これからますます日本が嫌いになっていく一方だわ!

 でもこれから(17時)新しいお話の原稿するから!
 先週はタイトルをどうしようか考えたところで力尽きたけど、もう開き直って「II」として先に進みます(^^)
 何の「II」かというと、あれですよあれ。相合い傘のあの話♡

 さてさてさて。
 今日も大人げない向井先生、だけどナチュラルに嫁をエスコートする向井先生♡
 もうね、なんだろね、こんなにされたら長谷川先生ますますメロメロだよね!(≧∇≦)
 ちなみに鼻で嗤うのは、向井先生、大の得意です☆
 ていうか、忍足先生も佐上先生も得意そう、ってつまり長谷川先生以外か(笑)
2018/06/24 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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