ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

the five senses-3 瞳の浮遊(1) ♥

 向井のメガネは、長谷川が外した。
 自分で外させると適当なところに放り出してしまうからだが、向井にはこれがツボだったらしい。唇の両端を上げて嬉しそうにしている。
「俺な、苦手なんだよ、本来は。こういう、世話焼かれるみたいなこと」

 灯りはフットライトだけ。
 互いにシャツを脱いだ状態で、ダブルベッドの上に向かい合わせになって座る。向井は両膝を立て、長谷川は片あぐらをかいて、しばらく額と額をくっつけていた。
 といっても、額をつけたまま固まっていたのは長谷川だけだ。向井の右手は静かに、しかし巧妙に動いて、長谷川の背骨の形を確かめている。
 時々、ぞくり、と勝手に震えが走るのが、長谷川は何故かくやしい。せめて声を出さないように唇を噛み、視線を落とす。
 その長谷川の伏せた瞼あたりを、向井の声音がやわらかく湿らせていく。

「デレデレしながら手を出されると邪魔くさいっていうか。自分でした方が早いし、放っとけ、とか思うんだけど。でもおまえにされると、なんか嬉しい。変だな」
「あ・・・そういえば先生、シャワー、浴びないと」
 黙って聞いていると果てしなく上気してしまいそうで、長谷川は慌てて言葉を探した。
 本当にそう思ったというのもあるが、長谷川にしてみればこれは最後の悪足掻きだった。こうなってみてもまだ、最後の最後で尻込みする自分がいて、内心舌打ちしたい気持ちにかられる。
 が、

「後で」
 簡単に一蹴されて、長谷川は思わず視線を上げてしまった。
「でも感染の問題とか・・・」
「それでも後で」
 向井は頑なに言い張る。それからぼそりとこう言い足した。
「そんなのに行ってるとおまえ、逃げちまいそうだから」

「逃げ・・・、」
 笑い飛ばしたい一方、軽くギクリとする。そんな長谷川を、向井は目をこらすようにして見つめている。視力の問題もあるかもしれないが、その表情はひどく真面目で、長谷川の中の何かが堰を切った。
「逃げませんよ」
 そっと頭をもたげ、向井にくちづける。舌先で軽くノックすると、すぐに応えがあった。触れ合わせた舌先をすべらせ、互いの輪郭をなぞり合う。
「逃げたりなんか、できません。掴まれっぱなしです。・・・向井先生に」
「・・・うん。俺もだよ」

 改めて深くくちづけ、舌を絡める。呼吸が上がっていく。たまらず長谷川は向井の首根っこを抱き、顔を逃がして吐息をこぼす。
 その間にも向井は一時も休まない。手のひら全体を使って長谷川の肩甲骨のラインを辿り、かと思うとベルトの内側に指先を差し込んで、奥を探ろうとしたりする。
 一方、唇は長谷川の首筋を食みながら下っていき、脈動する部分を正確に吸い立ててくる。

「ん・・・く、」
 思わず声をもらした瞬間、視界が反転した。向井に押し倒されたのだというのはすぐに判ったが、後頭部の下に向井の手が差し挟まれていたことに気づくのには少し掛かった。優しいその手のひらの感触。まるで庇うような、支えるような、守るような。
 ・・・やっぱり慣れてる。
 長谷川は敢えてそう考えようとする。女を相手にする時もきっとこんなふうにして、庇うように支えるように、守るようにして抱くのだろう、この人は。
 その姿がありありと浮かび、長谷川は反射的に瞳を巡らせようとした。向井を睨みつけてやりたかったのに、長谷川の後頭部を庇っていた筈の手はそれを許さなかった。ぐいと横を向かされ、耳朶を口に含まれる。
 と同時に胸の突起をまた擦り上げられ、長谷川の裡で熱いものがこみ上げた。

「は・・・っあ、」
 こんな、女みたいな声、上げたくないのに。俺ひとりが感じてるみたいな、そんな醜態を晒したくはないのに。
 そんな思いとは裏腹に、長谷川の肌はますます上気し、呼吸が速くなっていく。軽くかぶりを振るようにして向井の舌から逃れようとしたが、うまくいかなかった。いつの間にか手首を捉えられて、頭の上で固定されてしまう。
 反射的にもがこうとしたが、そのとき胸の先端をいきなり吸い立てられて、力が抜けた。びくっ、と身体が勝手に跳ねる。遅れて吐息が、断続的に喉を震わせる。

 そして確信犯の囁き。
「思ってたよりずっと、感じやすいんだな」
 もう、向井の呼気が肌に触れるだけで、下腹部が熱く滾る。そんな状態に持っていかれている。それを充分に自覚しながらも、長谷川はなおも悪足掻きの言葉を探す。
「神経が、多く、通ってる・・・ところばかり、先生が、」
「ふうん?」
 
 墓穴を掘った――そう気づいたのは、汗に濡れて束になった前髪の間から笑む向井の瞳を間近に見た、その瞬間だった。
「じゃあ長谷川の要望を聞こう。次、どうされたい?」



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*お題配布元;casaさま/the five senses/ありがとうございます♪「the five senses」で5話続きます。宜しかったらお付き合いくださいv



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Date:2014/06/28
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2014/06/28 【-】  # 

* Re: koさまv

あらら♪ 
またお1人の時に読み返してニヤけてくださいませv

ていうか、良かった~、(*^_^*)マークを頂けて。
明日はその、♥本番ですけども、いただけるでしょうかニッコリマーク。 どきどき。
長谷川センセが頑張っておねだりしてるから、許していただけるかしら・・・(明日の原稿チェック中)

それにつけても可愛い奴です、長谷川大貴。
もしも向井センセがシャワーに行ってたら、途端に落ち着かなくてそわそわそわそわ、部屋の中をぐるぐる歩き回りそうですよね。
何か飲み物買ってきます、とか言って出ていこうとしたり。
ああ、そういう展開でも良かったなあ。浴室から出てきた向井センセ(まだ髪とか濡れっぱなし)に見つかって「どこ行く気だ」ぐいって手首掴まれて壁に押しつけられ、顔の横に手をドンって突かれて「行くな」。みたいな。キャー(///ω///)

ってここで妄想してしまいました。済みませぬ。
呼び方については向井センセも気になった模様で、明日指導が入ります。
そして、けなげに頑張る長谷川センセなのでした。
でもすぐ戻っちゃうんですけどねー(^o^)
2014/06/28 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/06/28 【-】  # 

* Re: おっと

そうでしたか(^o^)ゞ
いや、あのニッコリマークは合格、もしくはよっしゃ、の印にしてくださいませ。そしたらコメントをチェックすると同時に安心できるので(笑)
不肖わたくし、褒められて伸びる子なので、その辺含めてひとつ宜しくお願いします。なんつて。

今回のB面妄想。またいずれ、シチュエーションを変えて使います♪
何せ、転んでもただでは起きない精神で始まったBL小説なので。ふふふv

取り合えず今回の5題、一応最後まで原稿上がりました♪
次はどんなお題を借りようかな。
二人のモノローグを交代で綴る、みたいなのにも挑戦してみたいです。
2014/06/28 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/06/28 【-】  # 

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