ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

the five senses-4 夜の香(2) ♥

 学会一日目。九時から十九時まで、昼食時間にランチョンセミナーまで出れば――実際にはそれは出ずに外へ食事に行ったが――みっちり十時間。内容はというとシンポジウム、特別講演、一般演題が二題、スポンサー教育セミナー、ワークショップ、そしてイブニングセミナー。
 聴講できるものはなるべく全部、と欲張ったので、かなりハードな一日となった。だがその分、刺激的でもあって、一日が終わったときには心地よい疲労感が残った。
 ちなみに夕食はひつまぶし。手羽先と並んで、絶対食べると向井が言っていたもので、長谷川が呆れたことに向井は予約まで入れていた。こういう労力は惜しまない人なんだよな、と、こっそりと微苦笑をもらす。

 味の方はいうと、「研究と選別を重ねた」という向井の努力の甲斐あって、上々。向井も長谷川も満腹かつ満足して店を出た。が、三通りの食べ方のうちどれが一番旨かったかは意見が分かれ、帰り道は言い争いになった。

「お茶漬けがベストだろ。その次が、うなぎの味をそのまま楽しむ食べ方。何事もシンプルなのが結局は一番いいんだよ」
「いや、僕は薬味と一緒に食べるのが一番美味しかったですね。向井先生って実は、ねぎと付く食材全般が苦手なんでしょう。玉ねぎだけじゃなくて、青葱も、白葱だって本当は嫌いなんでしょう?」
「・・・うるせえな、ちゃんと食べただろ!? 見てなかったのかよ!」
「見てましたよ。ほんのちょっとだけ入れて、おおかたは残してましたよね。しかもまたお茶を足したりして」
「いいんだよ、クサいものを無理して食べることないんだよ! おまえ、ホテルに着いたらすぐに歯を磨けよ。でないとキスしてやらないからな」

 仰せの通り、ホテルに着くなり長谷川は丹念に歯を磨いた。今度は順番にシャワーも済ませた。そして。
「今夜は僕が先生を、・・・ってだめですか」
 赤面しつつもそう申し出た長谷川を、向井は眉を上げて見やった。いいよ、と微笑混じりに答えられ、長谷川は内心ムッとする。いつまでそんな余裕かましてられるか見てろ、と思った、のだが。

「ふ・・・っ、んく、ふ・・・、」
 指と舌を使う傍ら、喘ぎに似た声をこぼしているのは長谷川の方で。
 おかしいな、と、飛びそうな意識の片隅で思う。上目遣いに向井を見やると、眉を寄せて目を瞑ってはいるものの、半開きになった唇からもれるのは深い吐息だけだ。
「先生、・・・気持ちよくない、ですか?」
 不安に駆られた長谷川が顔を上げてこう訊くと、向井はうっすらと目を開けた。唇がかすかに動く。バカ、という形に。

「反応で、判る・・・だろ・・・気持ち、いっ・・・て。・・・止めるな、続き、」
 ようやく、という感じで絞り出された掠れ声。それはどんな喘ぎ声よりも色っぽくて、長谷川の背筋が自然に震えた。
「・・・はい」
 いつしか微笑を形作っていた唇を、長谷川は再び下へと落とす。向井の中心で熱く滾っているそこに、ゆっくりと、そしてたっぷりと、舌を絡めていく。
「僕も、気持ちいいです・・・先生のココ、こうしてるだけで」
 滲んで伝う滴と混ざり合う唾液。その真ん中で脈動している熱い昂ぶり。
 それを間近に見て、口腔全体で味わって、五指を滑らせて触って、鼻先を押しつけて、そして耳を澄ませて彼の吐息を拾う。次第に切迫していく彼の全てに、たまらなくぞくぞくさせられる。

「ん・・・ん、先生・・・、この、付け根のやわらかい、ところ、とか・・・その先・・・昨夜、先生が、擦ってくれたところ、も・・・はっ、ぅく・・・今度は俺が、触れて、いい・・・です、か? せんせい・・・、」
 夜の空気を浸食していく、二人分の体液の香。粘り気を帯びた水音と、入り交じる吐息の熱。室温がどんどん上がっていき、汗になって伝い落ちてシーツをまた湿らせていく。

 もうすぐあなたは、頂点を迎えて迸らせるだろう。
 それともその前に、攻守交代させられるだろうか。
 それならそれでもいい。快感に溺れるあなたを、この身体に付与された感覚全てで感じていたい。そして、
 もっと感じさせて欲しい。あなたを。
 あなたで、俺をいっぱいにして欲しい。
 だから、もっと――

「っく・・・ひろき、」
「・・・あ。やっと声っ、・・・はっ・・・出して、くれましたね。じゃあ、んんっ、もっと攻めたら、もっと、ぅん・・・っ、聞かせて、もらえる、のかな・・・・今みたいな、あまい、声」
 言葉責めとか、今まであまりしたことはなかったけど。そもそも切れ切れなのが何ともカッコつかないけど。
 あなたになら、してみたい。何でも。
 して欲しい。どんなことでも。快楽でも苦痛でも、あなたがくれるものならば俺は喜んで享受する。
 快楽と苦痛は、発現するベクトルが違うだけで、本当は同じものだから。
 ね、そうでしょう? 向井先生。

「素直に声、・・・ん、出して、くれたから。ご褒美に、いいこと、んんっ、教えて・・・あげます。俺、はね」
 あなたが思っているよりずっと、あなたが好きですよ。
 途切れ途切れに、それでも長谷川がこう言い終わると。
 向井の身体がびくりと跳ねた。その両手が下方向へと伸ばされ、長谷川の髪を掻き回す。苦しげに、そして、愛おしげに。
 
 好きです。あなたのことが。
 ・・・ただ、だいすきです。
 



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*お題配布元;casaさま/the five senses/ありがとうございます♪「the five senses」で5話続きます。宜しかったらお付き合いくださいv



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Date:2014/07/01
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2014/07/01 【-】  # 

* Re: koさまv

わあい、(*^_^*)だ♪
良かったー、今回の長谷川センセのあのていたらく、どおかなあと内心思ってたんです(笑)

そう、攻めてない! 言葉責めもできてない! 本人はそのつもりのようだが!(大笑) 
あれじゃ、子猫がミャウミャウ言いながらじゃれてるようなもんです。単に可愛いだけ(^^;)ゞ

うーん、黒い長谷川センセは今いずこ・・・。
この次のシリーズではそういうのも書きたいなあ、なんて思ってたりします。
黒いけど、向井センセに実力行使で出られると、きゅう、って可愛くなっちゃう長谷川センセとかどうでしょう♪

手羽先の時点でバレバレかと思いますが、彼らの出張先は名古屋です。
ひつまぶし、いいですよねーv 私も好きですv
ただ、今回「ぬた」を出せなかったのが私としては心残り。
随分前ですけど、名古屋で食べた「ぬた」、赤味噌で和えてあって。私的にはカルチャーショックだったんでした。うちの地元では断固白味噌なので(^^)

向井センセたちが普段暮らしてるのは首都という設定なのですが(司くんと同じ病院ってことはそうですよね♪)、関東圏もやっぱり、「ぬた」は白味噌で和える・・・みたいですね。
葱&赤味噌でパニクる向井センセ、ちょっと見てみたかったです(笑)

そして、そうなんです、何だかいい感じにご来場いただいてるみたいで(〃ω〃)
しかも今みたら、ランキング、ひゃー! 今日の注目記事、BL恋愛小説ジャンルではえらいことになっとる!(仰天)
今だけとはいえ、有り難いです。瞳の浮遊から夜の香までで1、2、3位いただけるなんて・・・こんなのきっと二度とない(´;ω;`)ウゥゥ
記念に、プリントスクリーンして保存してしまいました(^o^)
koさま、そして皆様、ありがとうございます!

さて、明日と明後日でこのシリーズは終わりです。残り2日は♥ございませんので、安心してご来場下さいまし(^^)

2014/07/01 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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