ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

the five senses-5 ゆっくりと絡めて(2)

「・・・え」
 思わず向井の顔をまじまじと見てしまう。何だよと言いたげに見返してくるしかめっ面は、しかし、わずかに紅潮していた。あれ、この人・・・照れてる。
「要するにおまえも巻き添えだ。俺はホテルを検索するから、おまえは航空会社に電話して振り替え手続き。いいな」
 プイと視線を逸らしながらも、向井はこんな台詞を口にする。その場でスーツの上着の内ポケットに手を入れようとするので、長谷川は微苦笑しつつ止めた。
「何もこんな道ばたでしなくても。まずはどこか、コーヒーか何か飲めるところに落ち着きましょう」
「・・・うん」

 並んで歩き出しながら、長谷川は向井をそっと見上げる。
 思いついたら即実行、猪突猛進に見えて実は周到。今だって俺は、がっちり鷲づかみにされてる。この人を一人置いて先に帰るなんて、俺には絶対できないって知ってて言ってる。本当にタチが悪い。でもそのタチの悪さが、
 ・・・クセになるんだ。

「ところで向井先生、ホテルなんですけど。・・・もしかしてまたダブルですか」
「いや、男二人でそれはいくら何でも怪しすぎるだろ。ツインにしとくよ。・・・狭めのベッドでっていうのも悪くない」
 最後の一言を向井は、長谷川の耳に口をつけるようにして囁いてきた。えっ、と長谷川が思わず足を止めても、構わずそのまま歩いていってしまう。
「ちょ・・・向井先生!」

「ほら、早く来い。あ、タリーズ発見。あそこのエスプレッソ、俺好きなんだ。エキストラホットだと尚いい」
「・・・はい、じゃ取りあえず入りましょう。・・・エキストラ? って何ですか?」
「そうオーダーすると熱めにしてくれるんだよ。ま、普通に、熱めでって言えばいい話だけどな」
「へえ・・・僕はそれダメです。猫舌だから」
「ああ、そう? 猫舌ってなんか長谷川らしいな」
 ははっ、と笑われ、一瞬頬が熱くなった。そんなこと言って、と、せめてもの悪足掻きを口にする。
「熱々のエスプレッソなんて冷めにくそうなもの飲んで、舌を火傷しても知りませんよ」
「ん?」
 
 対する向井は、例によって余裕綽々。えんじと緑がストライプを描く庇の前で立ち止まり、長谷川を振り返る。
「その時はおまえが舐めて治してくれるんだろ。え、長谷川先生」
「・・・・・・!」
 駄目だ、撃沈。完敗。すごすごと向井の後ろに従って入店しつつ、長谷川はこっそり嘆息する。・・・胸の奥で蠢いた悪戯心――というよりスケベ心か? ――を検証しつつ、形ばかりメニューに目を走らせる。
「えーっと、エスプレッソ。シングル、エキストラホットで」
 店員にそうオーダーしている向井に乗っかる形で、僕もそれで、と言ってみると、向井が目を丸くした。大丈夫か、と目顔で訊いてくる向井に、長谷川は小さく笑ってみせる。
「予測される症状については、向井先生に治していただくので。大丈夫です」
「・・・そう来たか」

 そう。今夜もまだ、一緒にいられる。そして明日も、隣で過ごせる。
 だからあなたを、もっと感じさせて欲しい。
 ベッドに辿り着くまでの間も、ずっと。
 視線、それに言葉を、こんなふうに・・・ゆっくりと絡めて。



-end-


◆おまけ◆
向「ホテルオッケー、振替便の手配オッケー。ついでにいうと、味噌カツ屋の予約もオッケーだ。・・・ってこの状況、判ってるか?」
長「判ってます」
向「それにも関わらず、俺たちはまだタリーズにいるよな。・・・その理由はなんだ?」
長「・・・僕待ち、です。まだコーヒー・・・飲めてないから」
向「・・・・・・だから大丈夫かって言っただろ!」
長「大丈夫かとは、先生、言ってないです。そんなような目で僕のことを見ただけです」
向「ったく、口が減らない奴だな。ほら、俺に治療してもらうんだろ。潔くグビッといけ!」
長「っつ・・・! まだ無理です!」
向「じゃそれ、もうそのままで返却。出るぞ」
長「嫌です! 飲みたいんです、向井先生が好きなコーヒーを・・・僕も」
向「・・・・・・おまえな。今夜、覚えてろよ」
長「えっ? 何を? ていうか何でですか?」
向「いいから。ふーふーして冷まして、早く飲んじまえ。バカ野郎」

-おしまい。-
 



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Date:2014/07/03
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2014/07/03 【-】  # 

* Re: koさまv

今日も(*^_^*)マーク、ありがとうございます♪

最後、向井センセが持って行きましたね~。
可愛さとけなげさで対抗した長谷川センセですが、コーヒーはきっと諦めさせられたでしょう。
口の中の火傷はホントに痛いし、この後の味噌カツに差し支えるので。
というか、更にこの後のあんなことやこんなことにも(笑)

おまけの後、一分しか待ってもらえず、問答無用でトレイを下げられて不満顔してるところが目に浮かびます。ヒヒヒ。

ということで、おまけのおまけ小劇場。

長「飲みたかったのに。先生の好きなコーヒー・・・(ぶつぶつ)」
向「俺は缶コーヒーも好きだぞ。ブラック無糖のやつ。ついでにいうとインスタントも好きだ」
長「・・・そうなんですか。意外にこだわり無いんですね」
向「うるせえな。おまえに選ばせてやるっつってんだろ? ブラック無糖の缶コーヒーか、インスタントか。どっちがいい?」 
長「え・・・っと・・・(しばし考えて)インスタント、って答えたら、ホテルの部屋で向井先生が淹れてくれるんですか?」
向「うん。猫舌用のやつ、淹れてやる」
長「・・・絶対インスタントがいいです」
向「よし。途中でコンビニ寄ってくぞ」
おしまい。

やっぱり今日は向井先生劇場でしょうか(^o^)

ところで明日からですが、一応準備はしてます・・・けど、長谷川先生、もんんのすごく考えこんじゃってて。
切ない系が書きたかっただけなんですけど、それにしてもどおかなあ、という感じなんですが・・・読みたいですか?(ドキドキ)
向井先生は向井先生で、そんな長谷川先生がじれったくて、実力行使に出るし。(つまりまた♥あるし)
・・・読みたいですか?(´・ω・`)
2014/07/03 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/07/03 【-】  # 

* Re: ビバ!名古屋

確かに、うさこの処と比べてすごい落差!(笑)
ワンダホー名古屋らぶらぶワールド。
うさこたちも名古屋に逃げてくればいいのに(´・ω・`)←何か見失ってます。
ともあれ、おまけのおまけも受けてよかった~(^^)

そして、明日からの5題。
そうですとも、長谷川先生つらいです。なんか大変そうです。
でもこの人の場合、そういうのが半分趣味みたいなところがあるような(暴言)
ていうか、いじめ甲斐があるので、ついつい(ヒヒヒ)
大丈夫、向井先生は私よりもっといじめてますから←え

というわけで、明日からも5日連続更新しちゃいます。
♥もなんか・・・次回のは更にもっとこう、なんつーか・・・なので、もうニッコリマークはいただけないのかも。
とめそめそしつつ、最後の追い込み。書くぞー! ・・・うさこも。

2014/07/03 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/07/03 【-】  # 

* Re: 長谷川(黒)は・・・

今回はなりを潜めてる感じです。
ヒリヒリ感の方が強いかなー。
こんなに好きになっちゃったのね・・・とホロリとしていただけば成功なんですが、はてさて。

うーん、長谷川(黒)も書きたいんですけどもねー!!
まあそれはまた今後のお楽しみってことで(^^)

ワンダー名古屋ラブアイランドー!←どんどんわけが判らなくなっていく(笑)
あっ、次のシリーズがヒリヒリ系なのは、東京に帰ってきたからだ! きっとそうですよ!
いかんなあ、キミらまた地方の学会に出席しなければ!(`・ω・)ってやっぱりわけが判らない・・・
名古屋っそーゆー街じゃなくて普通ですよね。ええ。普通の街・・・。

2014/07/03 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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