ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

そしてまたキスをする-3 キスなんてただの束縛

 語調にこそ力が入っていたものの、声量を囁きレベルにまで落としてくれたのは上等・・・とするべきだろうか。
 そんなことを呆然と考えてから、長谷川はハッと我に返った。向井はといえば真面目な表情のままだ。長谷川と額を付き合わすような位置からこっちを見つめている。
「・・・何ですか、それは」
 まずは上体を起こして距離を保ち、それから。
 辛うじて一言返してみた長谷川だったが、間髪入れず叩き返された。
「言葉通りの意味だ」
「・・・ええと・・・」

 困った。顔と顔の距離こそ通常に戻ったものの、全然視線を外してくれない。長谷川は時間稼ぎに、グラスの中身を一口分だけ喉に流し込む。その勢いで、こそっと囁いてみる。
「・・・そうですか?」
「そうだよ」
 長谷川が言葉を重ねるほど、向井の目つきは剣呑になっていく。気づいてなかったのかと責められている気がして、済みませんと口走りそうになる。

 でも待てよ、と長谷川は何とか踏みとどまろうと試みた。俺からこの人にキスしたことなんて、
「そんなに数、ない・・・ですよね?」
「ないよ。大体俺からしてる。おまえからってのはベッドの中――」
「あのっ、はい、判ります大体。自分のことですから。一応自覚してます」
 慌てて遮ったが、どうやら逆効果だったらしい。自覚してる? と低い声で繰り返されて、長谷川の喉がごくりと鳴った。

「じゃあわざとか? あの短いキスは」
「わざとっていうか・・・僕から仕掛けても、いつも先生がすぐに主導権を・・・だから結果的にそうなってるだけで、僕は特に意図してやっているわけでは」
「俺が悪い、ってのか?」
 うーん、どうしたもんだろう。困り果てて、長谷川は唇を噛む。この人、たまにこんなふうに面倒くさくなるんだよな。・・・というか、それだけ腹に据えかねていたんだろうか。
 そう思うと、やはり謝るべきかという気もした。が、それも違う気がして、長谷川は更に唇を噛む。
 ・・・俺も意固地になっている。そんな自覚が頭をかすめたのは、こんな台詞を口走ってしまった後のことだった。

「だけどキスなんて、ただの束縛でしょう」
「・・・束縛? ただの?」
 ゆっくりと、向井が反復する。前半の語尾は上げず、その分後半の語尾は意味深に上げて。
 はっきり言って怖い。メガネ越しにこっちを見つめるその瞳が、底光りし始めたのも。
 それでも長谷川は虚勢を張る。・・・やっぱり俺酔ってる、と、諦めに似た気持ちで認めながら。
「少なくとも、僕からのキスはそういう意味です。先生に主導権を奪われなくても、多分、短くしかできないと・・・思います」
「ふうん」

 って。それだけ?
 決死の思いで、しかも、周囲に声が届かないよう気を遣いながら告白したのに、向井の反応はそんな一言だけで――内心、かなりがっくり来た。
 が。
「出るぞ」
 向井は急にグラスを干して、そのまま立ち上がる。えっ、と言ったきり動けないでいる長谷川を見下ろし、更にこんな言葉を継ぐ。
「避難階段、探すの手伝え」
 ・・・ええっ?

 
 

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*お題配布元;【確かに恋だった】さま/そしてまたキスをする/ありがとうございます♪「そしてまたキスをする」で5話続きます。宜しかったらお付き合いくださいv



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Date:2014/07/14
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2014/07/14 【-】  # 

* Re: koさまv

(●^o^●)マークは可愛いけど、展開はねえ・・・もう、何と申し上げればよいやら(大笑)

も・ち・ろ・ん、向井先生はあの台詞、キメキメで言ってますよ♪
かくて、またも振り回される長谷川先生。
向井先生との恋愛って大変そうだなーと、しみじみ思います(ふう)。
けどまあ、その分、トリップさせてもくれますけどネ!
それこそ、天国も地獄も、ってやつです。危ない危ない♪

そして明日は、まあ、展開は見えてらっしゃるかと思いますが、一応♥付きで・・・
しかも(2)まであるという(^o^)
♥の回ってついつい引っ張っちゃうんですよね~。
というか長谷川先生が段取り多い人だから!
今回の「キス=束縛」発言にしてもね~。
お題配布サイト様でこのお題を見た瞬間、あっこれ長谷川先生だ!って思いましたけど、さて、向井先生のご意見はいかに?

明日もどうかお付き合いください♪
2014/07/14 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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