ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

スキ・キライ2

「長谷川って好き嫌い無いの?」
 向井にそう訊かれたのは、例によって職員食堂の同じテーブルについている時だった。
 その日のA定食にはジャーマンポテトの皿が乗っており、器用に向井が分けた玉ねぎを長谷川が自分の皿に移している時、向井が唐突に問いかけたのだった。
 好き嫌い・・・、

「そうですね、特にこれといって」
 空になった皿を向井に返しながら答えた長谷川に、向井は不満そうにする。
「嫌いなものはないにしても、好きなものはあるだろ。何でもいいからおごってやるって言われたら、何をリクエストする?」
 うーん、と暫し真剣に考え込む。好きなもの・・・、
「あな、」

 あなたがいいです。

 そう口走りそうになった自分に気付いて、長谷川は慌てて右手で口をふさいだ。がばっ、というような大袈裟な動作になって、我知らず赤面してしまう。

「ん?」
 一方の向井は怪訝そうに長谷川を見やっている。長谷川は必死で答えを探した。あな、あな・・・ご、
「穴子飯・・・ですかね」

 やっとのことで言葉を引っ張り出した長谷川に、向井は呆れ顔をする。
「好物を言うのにそんなに照れるか? おまえって本当、秘密主義だよな」
「いえ、そういうわけじゃ・・・」
 口元から右手を外して、もごもごと呟いた長谷川をよそに、向井はちらっと腕時計を見ると、やべ、などと一人ごちる。食事の残りを一気に片付け、じゃお先、と言うなりトレイを持ってさっさと行ってしまう。

 あとに取り残された長谷川は、自分の皿を見やると改めて赤面した。
 白い樹脂製のその上では、向井の残していった玉ねぎが長谷川を待っていた。

-end-




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Date:2014/06/21
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