ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

普通のことしか言ってない-2 「ちゃんと見て」(2)

「え、と・・・」
 嫌です、とここで言ったらどうなるだろう。
 そんな誘惑が、一瞬頭をもたげる。だけど、気づいたら長谷川も微笑っていた。仕方ない人だな、というように。でも、
 愛おしそうに。

「・・・気が強くて頭が切れて仕事もできて、すごく尊敬できる人で、ちょっと子供っぽいところもある、僕の好きな人・・・でしょう。・・・向井先生のことですよ。決まってるじゃないですか」
「うん」
 そう言って向井はもう一度笑う。開けっぴろげに、嬉しそうに。
 先刻とは逆の意味で胸が痛くなる。そして思う。どうしてこの人は俺なんかのこんな言葉で、こんなにも嬉しそうに笑うのだろう、と。そのたびに俺をがんじがらめにしてるって、自覚してやってるんだろうか?

「素直で大変宜しい。じゃあここらでご褒美を出すか」
「ご褒美?」
 向井の機嫌が直ったのにはホッとしたし、今の笑顔も嬉しかった。
 が、そうなると今度は、包み込まれたままの両手が気になる。もじもじと指を動かしてみたが、向井の手はびくともしない。それに声音も。自分の手の在処なんて忘れてしまったかのような口調で言葉を継ぐ。

「夏休みの計画立案。何せ、付き合って初めての夏休みだもんな」
「あ、だけど・・・一緒には、」
 思わず言った長谷川に、向井はもう一度目元をほころばせてみせる。
「平日に一緒に休めないなら、週末を一緒に過ごせばいいだろ。ホテルとか、ああ、あと俺んちとか?」
「・・・え」
 
 思わず向井を見つめてしまって、その後で自分が真っ赤になっていることに気づいた。心臓がトクトクと、速いリズムを刻み始める。
 そんな長谷川を向井は真っ直ぐに見やったまま、真面目な顔でこう言った。長谷川の両手を包んでいた自分の手のひらを、水割りのグラスごと軽く引き寄せるようにしながら。
「それと、これ。もうこの辺にしとけ」

 嫌です、と言いたい誘惑は、今度は感じなかった。代わりに満ちたのは、くすぐったさに似た感覚。それが長谷川をまた微笑ませる。
 そして長谷川はこくりと頷いた。向井をちゃんと、真っ直ぐに見ながら。
「・・・はい」
 
 

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*お題配布元;【確かに恋だった】さま/エロくないセリフ5題/ありがとうございます♪ エロいことなんて、言ってないよ?で5話続く予定です。




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Date:2014/07/22
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2014/07/22 【-】  # 

* Re: koさまv

(*^_^*)マークありがとうございます♪

えへへ、本人にもう一回言っちゃいましたv 長谷川先生、甘えてます♪♪
かくて出ました、「俺んち」発言。
あーでもホント、あっこの本も、この本もある!とか言って、違った意味で目をキラキラさせそうですね~(^o^)
ごはんを作るのはきっと、長谷川先生です。でもあんまり上手じゃなさそう(笑)向井先生が作るのよりはマシでしょうけども。
目玉焼きの予定がスクランブルエッグになって、しょんぼりしてるのを向井先生にヨシヨシされるとか、そんな情景が目に浮かびます。ふっふっふ。

でもねー、ここで後ずさっちゃうのが長谷川先生なんですよ・・・。
今日せっかく一歩進んだのに、明日は二歩下がります。と予告しておくので、叱らないでやって下さいネ(^^;)

あ、でも最終的なエンディングはいい感じになります! 多分!←おい
2014/07/22 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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