ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

普通のことしか言ってない-5 「もう一回する?」(1)

 確かに、善人になんかなってなかった。
 ぐたりとベッドにうつ伏せたまま動くこともできず、長谷川は恨めしさを交えつつそう思う。身体の芯にはまだくっきりと向井の熱の感触が残っていて、ともすればびくりと腰が震えてしまいそうになる。
 と、足元の方でどさりとベッドが沈むのが判って、長谷川はのろのろと上体をひねると視線を向けた。ゴムの処理を済ませて戻って来た向井が、バスローブをひっかけた姿でそこに座り込んでいるのを確認し、長谷川は再び姿勢を元に戻す。怠い腕で上掛けを引き上げながら。

 相変わらず向井は、長谷川の裡に挿れる時にゴムを欠かさない。妊娠なんかしませんよ、と言ってみたこともあるが、問題はそこじゃないだろうと一蹴されてそれきりだ。
 勿論、長谷川にも判ってはいる。仕事柄、というより身をもって判る。
 実際には中出しされたことはないので、予測値として判るといった方が正確ではあるが、それでも挿れるのではなく挿れられるというのは実際、人生観が変わるような事件だ。そこへ加えて、危険度さまざまの感染症及びそのリスク。よく判っている。毎回装着する向井のような男は多分珍しいのだろうということも。
 それでも、一度くらい遮蔽物なしで向井を感じてみたいと思ってしまうのは、・・・向井の言うところの「乙女」の証明なんだろうか?
 
 そんな散漫な思考は、不意にくしゃりと髪を掻き回されて霧散した。視線を巡らせると、そこには向井の満足そうな顔があって、何ですかと言いそうになる。まさかもう一回とか言うつもりじゃ、
「狭いベッド、久々だったけど、良かったな。・・・最初の頃を思い出した」
「・・・そうですね」
 ついクスッと笑ってしまう。ホテル側の手違いでダブルの部屋をあてがわれた僥倖は、出張先での初回の時だけで、あとはツインの部屋を取っていた。ベッドも一台だけを使って、もう一台はチェックアウト間際に慌てて乱したりしていた。
 とにかくいろいろ物慣れなかったっけ。と、長谷川は回想していたのだが、

「狭いと、落とすまいとして深く引き寄せるだろ。おまえもしがみついてくるし。その切実な感じが、最初の頃のに似てて・・・しかも明るかったから全部よく見えたし」
「・・・え」
 そういえば。と長谷川は、上掛けの下でびくりとする。いきなり始まってしまった時こそ、狭いだの明るいだのと向井を押し戻そうとしていた記憶があるが、どこからか記憶自体が飛んでいる。うわ・・・、

「こら、逃げるな」
 上掛けの中にもぞもぞと潜り込んだら、上から乗っかってこられた。上掛けごと、くるむようにして抱きしめられる。
「先生、待っ・・・息、できな・・・」
 たまらず顔を出して息継ぎしながらもがくと、ようやく身体をずらしてくれた。が、それはそれで、また押し合いへし合いしてそれぞれのスペースを確保する。
「やっぱりベッドくっつけましょう。狭いですよ」
「そうだな。後でな」
「それと夕食、どうします? 外に出ますか?」
「んー・・・それもなんか怠いな。ルームサービス取るか」
「はい。じゃあベッドの移動はその後ですね」
 
 段取りを確認しているだけのつもりなのに、向井は長谷川を見やってニヤニヤする。何ですか、とばかりに目元に力を入れて見返すと、よりによってこんな答えが返ってきた。
「早くもう一回、って言われてる気がする」
 
 

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*お題配布元;【確かに恋だった】さま/エロくないセリフ5題/ありがとうございます♪ エロいことなんて、言ってないよ?で5話続く予定です。
 


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Date:2014/07/27
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2014/07/28 【-】  # 

* Re: koさまv

ええ、乙女です。とどまるところを知らぬ乙女ぶり。

おっかしーなあ、もっとクールで冷酷なところもある筈なのにな?
いや、あるんです、そういう面も(言い張る)。
明後日から始まるシリーズで、向井先生もそう言います。
けど、向井先生と2人の時は、乙女モードに切り替わっちゃうんです!

なので、なかなかクールな長谷川先生が書けない・・・ジレンマです(´・ω・`)
2014/07/28 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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