ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

普通のことしか言ってない-5 「もう一回する?」(2)

「なっ・・・、違いますよ!」
 かあっと、顔だけじゃなく身体まで熱くなってしまったのが、こうも密着しているとバレバレだ。だから狭いベッドは嫌なんだ、と長谷川は唇を噛む。何もかも筒抜けで、どんな顔をすればいいのかも判らなくなる。

「そんなこと言ってませんからね、僕は」
 ベッドの中にいるのがまずいとようやく思い至り、とにかくそこから抜け出して、身繕いを整えながら。
 長谷川はこう言いつのらずにいられない。おとなしく赤くなっていたりしたら、言質を取ったとばかりに夜通し、なんてことになりかねない。

 一方の向井も、面倒そうに起き上がって、床に落ちていた自分のシャツを拾っている。でも返してくる口調は相変わらず、どこか愉しんでいるような響きがあって、もどかしいやらくやしいやら。
「そんなことって? 俺だって別に、変なことは言ってないぞ」
「でも、・・・もう一回、とか」
「だから何を?」
「・・・ずるいなあ、先生は。ほんとにずるい」
「そこが好きなくせに」
「・・・・・・ほんっと、ずるい」

 同じ職場の同じチームで逆に良かったのかもしれない。
 ベッドに座り込んで、ルームサービスのメニューを向井と検討しつつ。長谷川はこっそりと、そう思う。たとえば五日間どこかのリゾート地で一緒に、なんて夏休みだったら、向井先生はともかく俺は完全に廃人になっていたんじゃないだろうか。
 一泊二日、週末だけの、週末ごとの夏休み。それで充分。廃人ぎりぎりのバカンスだ。
 でも待てよ、と長谷川はふと気づいた。そういう日程自体が、「もう一回」って言ってるような・・・?

「ん?」
 途端にカーッと赤くなってしまって、向井に怪訝そうに見つめられてしまった。それでつい、今思いついたことをそのまま口にしてしまう。
 最近こういうのが多くて危険だ、と自戒してはいるのだが、どうやらこのダダ漏れ状態は、向井が目の前にいて、きわどい話――長谷川にとって――をしている時限定に起こる事象であるらしい。
「・・・済みません。突発的に妙なことを口走るこの癖、何とかして直しますから」
 それで反省してこう言ったのに。
 向井は目元をほころばせて、長谷川の頭をくしゃくしゃと撫でたりする。そのまま手のひらを長谷川の頭に置いたまま、瞳を覗き込んできたりもする。
「そんなの、別にいいよ。少なくとも、俺と二人の時は直す必要ないだろう」
「先生と二人きりの時だけならいいですけど」

 向井の手のひらの感触があまりにも心地いいから、返って冷静になってしまう自分を長谷川は自覚する。
 おとなしくどっぷり浸って甘やかされて、喉のひとつも鳴らしていればいいのに、とも思う。なのに、ここで突っ張ってしまうのは、単に性格上の問題なのかな。それとも俺が――良くも悪くも――男だから?
「それが恒常化してきちゃってるのが問題なんです。常日頃の習慣から見直す必要があると思います」
「・・・ふーん」

 間違ったことは何も言っていないと思うのに、向井はますます可笑しそうな表情になる。
 ぽんぽんと頭を軽くはたかれた挙げ句こう言われて、長谷川は口角を下げた。
「まあやってみれば? 無理だと思うけど」
「・・・何でそう思うんですか」
 絶対直して、人前では鉄面皮で接してやる。そう決意しつつもこう訊くと、向井は事も無げに答えた。
「無理してよそよそしく接しようとしてるおまえ、絶対可愛いからな。余計、手を出したくなる。・・・たとえば、」
 不意に向井の顔が傾いたかと思うと、唇を合わされた。軽くついばまれてすぐに離されたので、長谷川が目を瞑った時にはもう遅くて、それがまたくやしい。
 慌てて目を開けて向井を睨んだが、目元にまるで力が入らない。それもくやしい。

「こ、んなこと、人前でする気じゃ・・・!?」
 精一杯の長谷川の抗議は、またしてもあっさり流された。更にくやしくもあるが、同時にホッとする。
「まさか。そんなわけないだろ」
「ですよね。いくら何でも常識的に――」
「じゃなくて。今みたいなおまえの顔、そこらの他人に見せたくないから」
「・・・・・・!」

 もう駄目だ、降参。意地で手放さずにいたルームサービスメニューももう持っていられなくて、パタリとベッド下に落としてしまった。だがそれを拾う気力もなく、長谷川はがっくりとうなだれる。
 そのまま向井の胸に抱き寄せられて、後頭部をよしよしされても、もうされるがまま。今みたいなこの人に抵抗なんかできっこない――言い訳がましくこう思う、
 いくら俺の性格に問題があっても、・・・いくら俺が男でも。

「今は二人きりだぞ。今の、もう一回しようか?」
「・・・はい。いえ、あの」
「どっちだ?」
「・・・向井先生は? もう一回したいんですか?」
「うん」
「・・・じゃ、してもいいですよ」
「そりゃどうも」
  
 かくて再び、軽いキス。もう一度、今度は舌先をなぞり合うキス。そしてもう一度――
 こんなふうにして、何度でも。
 狭いベッドなら落ちないように互いをつかまえて、広くしたベッドなら泳ぐようにもつれ合って。
 そんな週末を共に重ねていけますようにと、長谷川は願う。
 いつかもっとたくさんの時間を、たとえばどちらかの部屋で共に過ごせるようになるかどうかは、まだ判らないけれど。
 それでもあなたとこうしていると、今のこの時間が梯子の一段一段になって、いつかそこまでのぼれるかもしれないと思えるから。
 だから。
「先生、もう一回・・・」
「うん」
 甘いキスと、もっと甘い愛撫を・・・もう一度。

 

END.
 
 

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*お題配布元;【確かに恋だった】さま/エロくないセリフ5題/ありがとうございます♪ エロいことなんて、言ってないよ?で5話、でした。
 



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Date:2014/07/28
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2014/07/28 【-】  # 

* Re: Sさまv

こんばんは~&お疲れ様です~~!(*^_^*)

あ、私こそご無沙汰しておりまして、申し訳ありません(ぺこり)。
7/22から職場復帰しまして、予備体力ゼロであることを痛感する毎日です・・・と言いつつ週末はつい原稿してしまい、ちっとも休めず!(大笑)
でもまた入院するのはイヤなので(リアル向井先生&長谷川先生には会いたいけど♪)、様子を見ながら書いていきたいと思ってますv

というかですね、そうなんですよ、別館では凄く拍手頂いてて、なんか申し訳ないくらいで・・・(おろおろ)
と言いつつも嬉しくて、不定期の筈がついつい更新してしまい、気づいたら連日更新という(^o^)

し・か・も、今回魅惑的なネタをお耳打ちしていたただいて・・・! うわあそれ、すごく書いてみたいです!
ドクター同士のこのシリーズとはまた別に、サラリーマン同士とかも書いてみたいな~と思ってたんですが、そっちでトライできたらいいな♪なんて、今、もりもりと妄想中です。ありがとうございます♪

このシリーズも、カウンタは地味な回り方ですか(笑)、でも皆様にとても愛していただいてる実感があるので、書き続けていきたいな~と思ってます。
廃人ぎりぎり、ええもう! 長谷川先生はこの台詞、絶対に満面の笑みで言ってますよね! 表面上はともかくとしてね!(笑)
単純に嬉しくてたまらないんです、向井先生といるだけで。きっとね♪

Sさまの挑戦といいますか決意、ブログの方でもちらっとお見かけしていて、そうかあ~と思ってました。
うん、でもきっと、何か書いてらっしゃるんじゃないかな♪
だけど、更新しなくていいとなると、気持ち的に随分違う気がしますので。夏休みってことでのびのびと、書くもよし・書かぬもよし、の生活をご堪能下さいv
私はただもう、帰還をお待ちするのみ! ホント待ってますので!(^^)

別館にも本館にも、良かったらいつでも遊びにいらしてくださいね♪
いつでも熱烈歓迎! お待ちしています(^ω^)
2014/07/28 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

* Re: koさまv

はい、向井先生の勝ちでした♪

長谷川先生は、ここまできたらもう、愛らしさで勝負するしかないと思うんですよね(^o^)
でなかったら、一人でぐるぐる考えすぎてわけわかんなくなるか。カラカラ回る遊具で日がな一日回ってるハムスターみたいに。
どっちにしても向井先生には可愛く見えるだけでしょうから、ぎゅうぎゅうされて終わりですけど(。・ω・。)

てなわけで明日はですね、読み切りのショートショートで一息入れて、あさってからまた5話シリーズ、いきます。
その次はまたまっしろ~どうしよう~。
でも何か書いてるだろうな(^^;)

2014/07/28 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/07/28 【-】  # 

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