ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

馬鹿がする馬鹿な恋(5)

 ――叶わない恋なんてロマンチックな言葉は似合わない。これは馬鹿がする馬鹿な恋。

* * *

「こんなふうにして、どこまで行けるんでしょうね」
 後戯といえるほどのものじゃないが、行為の後で長谷川と折り重なっているのが俺は好きだ。怠い手足をだらしなく絡めて、時々指を這わせて反応を愉しんだりして。
 そんな俺に対抗するかのように、長谷川はこんな台詞を口にする。それでも自暴自棄な口調にはならず、穏やかなほどの声音で優しく囁くから、俺は窘める気もしなくなってただ微笑む。
「そうだな。どこまで行けるかな」

 本当に、どこまで行けるだろう。
 こんなふうに、無理な接合とぎりぎりの愛撫を繰り返して、何も生み出さない行為を重ねて。
 男女カップルみたいな判りやすいゴールは、俺たちにはない。いつ途切れても不思議はない。今だけの、この瞬間だけの恋。そもそも叶う筈のなかった、これは恋だ。

 でもそんな、感情過多なフレーズは似つかわしくないな。
 単に、馬鹿がする馬鹿な恋だと最初から判っているから。
 しかも、馬鹿で上等なんて本気で思っている自分を、俺は知っているから。
 おまえを好きになれて良かったと、心から思っているから。
 ああ、本当に馬鹿だ。馬鹿すぎて笑えてきちまう。

「もし明日終わりになるとしても、僕はこの気持ち、忘れません」
 そして長谷川はまた、こんな乙女発言を堂々と口にする。
 その上、自分で照れてリネンの海の中に逃げ込もうとする。可愛すぎるだろうが、このバカ。
「うん。俺もだよ」
 それでも俺も同じ気持ちだったので、そう言うとリネンごと長谷川を抱きすくめてやる。薄い布ごしに身体のラインを辿り、弱いところをくすぐってやると、抵抗だか愉悦だか判らない声をもらす。
 くぐもって聞こえるそれをもっと聞き取ろうと、指の動きを強めると、長谷川はたまりかねたようにリネンから頭を出して、ぼさぼさの髪のままで俺の唇を求めてくる。
 応えて深く口づけながら、俺は腕の中のあたたかな生き物をもう一度抱きしめる。好きだよ、と、唇にすっかり馴染んだ言葉をまた送り出しながら。

 いつまでもこうしては、きっといられない。終わりはいつか必ず来る。
 でも、今はその時じゃない。
 それで充分だ。そうだろ?

 そして願わくは、その終焉が先のことであるように。
 一日先でも一時間先でも、一瞬先でもいい。
 それまでは一緒にいられるように。
 
 互いにそう願っていれば、それはきっと現実になる。俺はそう信じる。
 馬鹿の恋ってのはそういうもんだろう。
 闇雲で狂信的で、刹那的なのに楽天的で。
 叶わない筈なのに叶った恋だなんて、だから俺は言わない。
 馬鹿がする馬鹿な恋でいい。
 そうである限り、馬鹿みたいに信じていられるから。
 今のこの一瞬が、永遠に続くことを。


 
END.
 
 
 

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*お題配布元;【確かに恋だった】さま/遅過ぎた初恋を語る長文5題/ありがとうございます♪適宜抜き書きで5話でした。
 


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Date:2014/08/03
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2014/08/03 【-】  # 

* Re: koさまv

わーい、(*^_^*)マークありがとうございます♪

というわけで向井先生sideでした。
普段、三人称ながらも長谷川先生の視点寄りで書いているので、全くの向井sideっていうのは、書いてても目新しくて楽しかったです(^^)
時々は、こういう感じで書きたいですね~。

向井先生、そうそう、長谷川先生の目を通すと特に、いつも悠然と構えてるっぽくて何考えてんだか今ひとつ判んないんですが。
実はこんなだよ~というのを、いい機会だとばかりに語っていただきました♪
向井先生が今回言ってるみたいに、一瞬一瞬を積み重ねて、少しでも長く続いたらいいなあと私も思いますv

さて、明日からはやっと、やっっと、司先生が登場してきます!
といっても明日はまだ、噂話の中に出てくるだけですけど。
テーマは、司先生を書くことと、やきもきする向井先生を書くこと(笑)
あ、向井先生をやきもきさせる人は司先生じゃないですよ。司先生はどう転んでもストレートです。期待させては申し訳ないので、先に言っておこう(^o^)

新シリーズ、明日の第一回はちょっと長め(というかいつもどおり)ですが、その次からは短めになるかも。
ともあれ、連日更新継続を目指して、これから原稿頑張ります!
2014/08/03 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/08/03 【-】  # 

* Re: koさまv

あ、そうですね、司くんの登場ということは「真昼の月」ともつながりますね(^o^)
彼女ができない司先生のために、同期の藤堂先生(ってご記憶でしょうか。柾さんが車と接触した時に診てくれた外科医です)が合コンを企画して、向井先生と長谷川先生も人数合わせで呼ばれて・・・とか今、瞬間的に妄想しました(笑)

大河といえば実は、本館の「官能小説家」も「真昼の月」とこっそりリンクしてるんですよ~。
りさたんの産(婦人)科主治医は、うさこの産科主治医でもあるのです。安西先生ですね。「真昼の月と空と向日葵 2」に出てきてます♪
ってここで書いてもアレな話題でした。済みません(^^;)

えと、話を戻しまして。
今回、向井先生をやきもきさせる人は、男性ではなく女性でいってみました。
男三人のすったもんだは、別シリーズでやりたいと妄想中です。
リーマンもので、タイトルだけは決まってたりする。「スリーピース」。あはは、意味深!
や、そんなシーンは出てきませんよ。多分ね。

あ~でもそうですね、長谷川先生は司先生のことも尊敬してるので、この先はそんなようなシーンも入ってきそうです♪
ていうか、細切れにしてるからですけど、次回シリーズは長くなりそうで戦々恐々。
でもでも、そうなんですよ、たくさん拍手いただいてるのが嬉しくて、ついつい原稿してしまってます(^^)ゞ

その代わり、本館の原稿がやばい・・・とてもやばい(ひい)
2014/08/03 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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