ただ好きだという、この気持ち。

□ 読み切り □

スローバラード(6)

 違うのかな、とも、正直思った。同情なのかな、とも。
 だって、男どうしだし。患者と医療スタッフだし。そもそも進藤さんにとって、俺はまるっきり恋愛対象外だ。考えたこともないだろう。目の前の男が、自分をその、……好きでいる、かもしれないなんて。
 それに、と飛鳥は思う。悪足掻きのようにして。
 俺だって、と。
 今まで同性に対してこんな感情を抱いたことはなかった。

 それなのに、夢を見る。
 ここのところずっと、夢を見ている。進藤の夢を。
 その中に登場する飛鳥は、進藤とやけに親密だ。二人で何やら言葉を交わし、笑い合い、互いの背に手を回し、唇を――

 うわあ、と飛鳥は思う。実はキスの先も既に経験していて――もちろん夢の中だけの話だが――、そんな時は早朝にガバッと跳ね起きて洗濯機を回す羽目になった。
 そういう日が進藤のリハ日に当たっていたりしたらもう、仕事休みてえとまで思う。……休まないけど。というか休めないけど。

 恋愛の好きとそうじゃない好きは、セックスしたいと思うか否かだ。
 昔、友人がそう言っていたのを思い出した。
 そいつはやたらモテる奴で、絶えず彼女がいて、時には二股、三股なんてこともあって、しょっちゅう修羅場を演じていたものだった。

 あいつに言わせると、俺のこれは……。

 そんな悩みで頭をいっぱいにしていて、進藤の病室の前までは心臓もバクバク暴れて息が止まりそうになっていても。
 それでも飛鳥にとって、進藤と過ごす時間は宝石のように感じられた。
 一瞬一瞬、表情のひとつひとつ、声音も言葉も、何もかもがキラキラしていた。大切な、何にも代え難い時間。
 
 って俺、やっぱり進藤さんのこと好きなのかなあ。
 でもなあ。どうなんだろうなあ。
 そんなふうに揺れてばかりの飛鳥を前にして、進藤ときたらまるで無防備だ。飛鳥に向けてくる笑顔は、相変わらず屈託がなかった。
 恒常的に痛かったり苦しかったり、怠かったり、した筈なのに。

 そして。
 飛鳥は、自分の気持ちを決定的に意識させられることになる。進藤がふと口にした、こんな台詞によって。
「なんかさ、右手がさ」
「え?」
 



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Date:2015/12/05
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