ただ好きだという、この気持ち。

□ 読み切り □

スローバラード(10)

「はい?」
 何だろう。リハビリが再開されることについてだろうか。
 そう思いつつ、飛鳥はベッドサイドに膝をついた。少しでも進藤に近づきたかった。許される範囲でいいから。……患者と医療スタッフ、それだけの関係でいいから。

 でも、進藤の言葉は、完全に飛鳥の意表を突いた。
「元職場の人がさ、見舞いに来てくれて。ほら、藤吉先生」
「…………」

 藤吉は、ピアノ教室で飛鳥を担当してくれている女性講師だ。年齢は飛鳥より五、六歳上だろうか。小柄だし手も小さいのに、叩き出す音はダイナミックで情感豊かだ。指導もまた然り。
 一度、旦那さんが迎えに来ているところに出くわしたことがあるが、優しそうな人だった。彼女によく似た三歳の娘を教室に通わせている。
 ……のだけれど。

 ああはい知ってますお世話になってます。そんなふうに言うわけにはいかない。
 飛鳥は曖昧な笑みを浮かべつつ、必死で自分に言い聞かせた。まだバレたと決まったわけじゃない。ほら、という一言が気にはなるけど、セーフだったかもしれない。だから素知らぬ顔でやり過ごさなければ。

 しかし、飛鳥のその努力は無駄に終わった。
 進藤が穏やかに言葉を紡ぐのを、呆然と聞いているしかなかった。
「何度か来てくれてたみたいなんだけど、俺、調子悪くて会えなかったから。先刻やっと会えて、それで聞いた。……飛鳥さん、今ピアノ習ってるんだって?」
「……え」
 
 


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Date:2015/12/09
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