ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

白衣シンドローム(2)

 うん、と言いつつ向井は素直に揚げ出し豆腐の皿に箸を伸ばし、長谷川は店員の視線を掴まえるべく店内を見回した。
 首尾良く店員を呼び寄せることに成功し、向井のための生中をひとつと、自分用にウーロン茶を頼む。と同時に長谷川は、内心で軽く嘆息していた。

 医者になって以来、親族や友人の集まるところに顔を出すと健康相談が始まる。それで自分のことを直接相談されるのならともかく、知人のことまでうろ覚えの症状を口にして判断を求めてきたりもする。
 それが長谷川には少し億劫だ。無責任なことは言えないと思うから、かかりつけ医があるならそこに相談しろと言うことに決めているが、そういう時は大抵不満そうな顔をされる。相談者からもだが、ネタにされた人間からさえも。大したことはないのに大騒ぎして、と非難されるのだ。全くもって、理不尽だと思う。

 今回もこのパターンの後者である気が、実はしている――なんて、向井にも、消化器内科の近衛司にも申し訳なくて言えないけど。
 特に近衛は、本来の得意分野は大腸であるにもかかわらず、とにかく診てみた方がいいと言ってくれて、内視鏡室にも強引に予約を通してくれた。
 向井より三年上の近衛は、それでも院内では若手の範囲内で、長谷川にとっては相談しやすい相手だ。年齢的にもだが、雰囲気がオープンなのだ。
 だから、他愛ない相談や、今回のように身内が絡むことでも、他意なく聞いて対応してくれる。患者にとってもそうであるらしく、近衛の外来枠は週に一つだけだが、コンスタントに患者が訪れていると聞く。

 問題は、従姉妹の性格――というか性癖だ。
 と思ってしまう自分を、長谷川は戒めた。予断は常に禁物であり、医療に関して絶対ということはあり得ない。とにかく検査。全てはそれからだ。
 従姉妹の自宅に電話した時、最初に電話口に出た伯母の言葉は、敢えて忘れることにしよう。
(あの子ね、最近失恋したらしくて。そのせいじゃないかと思うんだけど)
 ・・・それが確定診断だとしたら、と思うと医師としてのモチベーションがガタガタと崩れる。しかし、器質的なものでないに越したことはない。伯母の予想が正しいことを祈ろう。
 そう思いつつ長谷川は、飲み物のお代わりと一緒にやってきたアジのたたきを、向井の分も取り分けた。
 
 
 

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Date:2014/08/05
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2014/08/05 【-】  # 

* Re: koさまv

うぉう、(*^_^*)マークありがとうございます♪

何だかしばらく、BLじゃなくて単なるお仕事小説になりそうで、申し訳ない気持ちでいっぱいです(苦笑)
でも、そのうちBLになりますので!と言い訳してみたりして!
取りあえずしばし、お仕事小説モードでお付き合いくださいませ。
明日も宜しくお願いしますm(_ _)m
2014/08/05 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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