ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

白衣シンドローム(5)

 何を言い出したんだ、というのが正直なところで、ついでに言うとかなり引いた。
 が、優莉の言うとおり、長谷川は白衣を着ていれば聴診器も首に引っかけ、ついでにネームプレートには顔写真も診療科もついでに名前もきっちり入っている。
 対外的にはどう見ても、医者と患者。
 となれば、無下に声を荒げたりもできないわけで。

「・・・優莉ちゃん、ついでにいろいろ検査しようか。心臓とか、あと、」
 頭とか? というのは優莉が自分で言ってくれた。意外に空気を読む子らしい。
 と長谷川が思ったのも束の間、
「ひろくんがしてくれる? それならいいよ。好きにして?」
 ・・・・・・だからそういう妙な言い回しを公衆の面前でするなってのに、しかも何だそのハートマークでも付いていそうな語尾は!
 そう言いたいのをぐっとこらえて、長谷川は一歩、足を後ろに引いた。
「とにかくまずは胃から検査しよう。・・・また様子見に来るから」

 有り体にいうと逃げ出したんだよな。そういう自覚もあったし、そんな自分に忸怩たる思いを抱かないでもなかったが。
 でも同時に、どこかで安心もしていた。失恋したてじゃなかったのかとか、随分立ち直りが早くないかとか、いろいろ突っ込みどころはあるにせよ、優莉の視線が自分に向いているのならその方がいい、と。
 向井先生に熱を上げられるよりはずっといい。それに、優莉が向井先生のタイプだとしても、優莉本人が相手にしなければそれで解決だし。

 ・・・近衛のことはまるきり頭から飛んでいたという点に長谷川が思い至るのは少し先だが、いずれにせよ、優莉の眼中には幸か不幸か、近衛はかすりもしなかった。
 近衛は院内スタッフにも患者にも人気があるし、外見上も決してイケてなくはないのだが、何故か恋愛沙汰と無縁でここまで来ている。とはいえそれは傍目にそう見えるだけで、実際はひそかに彼女がいるのかもしれないが。

 ともあれ、内視鏡室からコールがあって長谷川が向かうと、優莉は前処置を受けているところだった。麻酔剤を口に含んでいる状態のくせに、長谷川へと手を振ろうとするので、慌てて止める。
 そこへ向井もやって来た。え、と長谷川はつい目を見張ってしまう。本当に来てくれたんですか?
 別にいいのに、優莉なんかのために。そんなことを思っている長谷川を、電子カルテの端末前に座っていた近衛が手招いた。
 

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Date:2014/08/08
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2014/08/08 【-】  # 

* Re: koさまv

(*^_^*)マークありがとうございます♪

優莉ちゃんは、16歳の時のうさこをもっと強気+わがままにしたイメージです。
年齢はうさこ(当時)より5つも上の設定ですけどね!(笑)

うんうん、あの台詞、語尾をキュッと上げて言ってますね(^^;)
周りの老人たち(←決めつけ)の視線はもちろん釘付けです。ホオー、って感じで。
司先生は、うーん、色気・・・はないかも(笑)
外見もそこそこイケてる筈ではありますが、司先生はむしろ人柄に惚れてほしい人ですね。
この後活躍しますので、どうぞご注目下さいv

ああっ、でも、バスや電車や本屋さんでの出逢いもいいな!
個人的には本屋さんが好みですね~。医学書コーナーで芽生える恋とか♪
や、でも一応、研修医(外科)と恋愛する話をちょこっとだけは書いてるんですよ。
念のため申し上げておくと、相手は女です(笑)

んー、でもその原稿、テーマが重すぎて先に進めなかったので、名前と年齢の設定だけ残して本屋さんでの恋に移行しようかな~。
何にせよ、時間が足りないいいいい!
ギブミー健康&夏休み。切実です。
2014/08/08 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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