ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

はつ恋(1)

 振られてしまおう。
 そう決意したきっかけは特にはない、と長谷川は思う。ただ、・・・もう限界だった。
 自分以外の人間を見つめたり笑いかけたりする向井を目にするたび、心の底に溜まっていった澱。降り積もるほどに重くなり、意識せずにいられなくなった。

 嫉妬、じゃないと思う。それよりももっとタチが悪い。既製の言葉を当てはめるなら、これは自己顕示欲だ。その認識は、長谷川にはひどく苦い。けれど、もうどうしようもない。認めるしかない。

 あの人のことが好きだ、というこの気持ちも。

 今まで好きになったり付き合ったりした相手は、当然ながらいずれも女性だった。プラトニックで終わったのは十三の時の初恋くらいで、その次からはもっと深くまで触れていって、ぎこちなさは次第にルーチンへと変わった。
 そうだ、と長谷川は苦虫を噛みつぶしながら考える。女の扱い方なら知っている。どうすればよろこぶのかも、経験則として身についている。だけど、男の――しかも年上の人を好きになってしまった時にどうすればいいのかなんて、俺は知らない。どう振る舞ったらいいのか判らない。この気持ちも、どう処理すればいいのか見当がつかない。
 まるで、二度目の初恋だ。しかも一度目の時より不器用ときてる。最悪だ。救いようがない。その上、何だこの感情。恋情が、想う端から違うものに変わっていく。
 嫉妬にすら届かないうちに、胸の内にこみあげてあふれていく。

 俺があなたを好きでいることを知って欲しい、という、ただそれだけの、これは気持ちだ。
 他の人間と笑い合っていてもいい。他の奴のことで頭をいっぱいにしていてもいい。あなたが誰を好きでも構わない。
 ただ、知っていて欲しい。
 俺があなたを好きだ、という、ただそれだけの事実を。

 そんなの知らされたって、彼には重いだけだろう。そう考えるだけの理性はまだある。気まずくなるのは必至だ。同じ病院に勤めていて、同じチームとして動くことが多いんだから、そんな事態は避けるべきだ。そう思うだけは思っている。
 俺ひとり我慢していればいいんだと、長谷川の理性はそう主張する。そうすれば全て丸く収まる。
 僕は本質的にはヘテロだけどあなただけは特別なんです、などという主張を理解してもらえるかどうか判らないし、たとえ彼が理解してくれたとしても自分を見る目は確実に変わるだろう。それに耐えられるのか、俺は?
 ああ判ってる。全部その通りだ。自分の理性ながら、お説ご尤もってやつだ。幾度となく繰り返した自問自答は、毎回この結論に辿り着く。そして感情が叫びを上げる、

 全部壊しちまえ、と。
 彼への想いごと、何もかも。



→ BACK
→ NEXT

にほんブログ村 トラコミュ オリジナルBL小説・・・ストーリー系へ
オリジナルBL小説・・・ストーリー系



*拍手クリックで御礼SSに飛びます。
ぽちっと楽しんでいってくださいませ♪

*このお話が気に入ってくださった方はこちらも是非ぽちっと♪
ありがとうございます、大変励みになってます!

*    *    *

Information

Date:2014/06/21
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://kisschoko.blog.fc2.com/tb.php/6-0f5f0a8f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)