ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

白衣シンドローム(12)

「・・・そっか」
 近衛からの反応はただそれだけだった。
 あとは特に何を言うでもなく、枝豆をつまみながらビールを飲んでいる。たまりかねて長谷川が顔を上げるまで。
「そっか、って、それだけですか? いろいろ言うことがあるんじゃないですか!?」

「ん? うーん・・・そうだなあ」
 対する近衛は淡々としていた。少なくとも、長谷川の目にはそう見えた。どちらかというとむしろ、目の前の鉄板の方に注意を向けているようにさえ。
 はーいお待ちどう、という元気のいい声とともに、じゅうじゅう音を立てながら盛られたのは、ねぎ焼き。それと、とん平焼きだ。鉄板から直接ヘラで取って食べるのが通なのだろうし、近衛も普段はそうしているのかもしれない。だがこの時は、近衛は店員に声をかけて取り皿をもらってくれた。
 そうして、自然な動作で長谷川の分も取り分けてくれる。
 続いた声音も、ごく穏やかだった。

「びっくりした。あの時に居合わせたナースを思い出そうとしてた矢先に、そう来たから」
「・・・でも先生、びっくりしているようには見えません」
 反論した長谷川に、近衛は微笑する。
「そうかも。びっくりもしたけど、納得の方が強いから」

「納得?」
 思わず問い返すと、近衛はもう一口ビールを飲んでから、ねぎ焼きに箸を入れる。そうしながら淡々と答える。
「うん。あの時、って優莉ちゃんの検査の時、その前の予約段階でも、向井先生がすごく心配してたから。っていうかムキになってるって感じだったな、今思い返すと。・・・でもこれでよく判ったよ。向井先生が心配してたのは優莉ちゃんじゃなくて、」

 長谷川先生のことだったんだね。
 


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Date:2014/08/15
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2014/08/15 【-】  # 

* Re: koさまv

あ、今日は(*^_^*)マークですねv 良かったです♪

検査の時の向井先生、鬼気迫ってたんじゃないですかね。
真剣すぎて怖いよ、的な。
長谷川先生は、それでも比較的フラットな感じで臨んでたっぽいけど、向井先生の中では・・・

従姉妹に重篤な病変見つかる→長谷川が悲しむ→しかも消化器系だったら外科紹介か→俺にできることは何もない→長谷川は悲しみを抑えて笑顔で従姉妹に「大丈夫だよ」とか言うんだろう→そんな長谷川に対しても上っ面の慰めしかきっと口に出来ない→畜生、くらい、考えが回ってたんじゃないかと(笑)

しかし、ただいまは本館の原稿を書いているので、向井先生は未だに放置状態です。ついでに長谷川先生も。
二人一緒のシーンを早く書いてあげたいものです。しばらくは荒れるにしても、別々に悩んでるよりいいですよね。フウ(ため息)

そして司くん。いい奴ですよね~(^^)
司くんの恋も書いてあげたいんですが、本館でのスピンオフになるなあ・・・。
いっそ相手を男に・・・! とか、よからぬ妄想にかられる今日この頃です。
2014/08/15 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/08/15 【-】  # 

* Re: BLでも

司先生、本質的にはノンケですけど、でもそれを言うなら向井先生と長谷川先生だって本来はノンケだと、少なくとも本人たちは言ってますしね(笑)
それに司先生のあのおおらかさからすると、人間として惹かれる相手であれば、性別にはあまりこだわらないかも知れないですよ。ニヤリ。

司先生の恋物語、どうせならこっちで書きたいんですよねー私も。
でもわざわざ、本館と別館分けたしな~。
こっちで書くなら、司先生のお相手はやはり同性になるかと・・・

あ、「一度でいいから」的な、明日には別れることが決まってる状況下で一回だけ、とか、そういう切ない系の短編とかどうですかね。
で、司先生はまた婚期を逃す、と(笑)
何しろ本館の現在の時間軸でいうと、司先生、39歳の筈なので。
別館の現在の時間軸では33歳ですから、6年も空白があるわけですよ。
この司くんがそんなにもの間フリーでいる筈がない! 何か理由がないと! で、それは、性別を同じくする人との儚い恋・・・なんつて。

いかんなあ、今の原稿で手一杯なのに。
またしても、書きたい病が疼きます。

向井先生は(って急に話が変わりますけど)医師としては欲張りなんだと思います。
原則、自分が診た患者は治したい。治療的診断で進めるんじゃなく、確定診断のもとに進めたいタイプかな。
でもそんなのばっかりなわけはないので、その辺がジレンマでしょうね~。
だからこそ専門科は、総合診療科なんでしょう。
あー早く向井先生を書きたいな。まだ当分は拗ねてて、可愛げがない状態ですけども(笑)
2014/08/15 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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2014/08/15 【-】  # 

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