ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

白衣シンドローム(14)

「だって、」
 と言った瞬間、懐かしい声が長谷川の中で谺した。
 記憶に焼き付けられたその声は冷たく乾いていたけど、それを辿る自分の声はひどくやわらかいものになった。まるで愛おしんでいるかのような。・・・向井の言葉だという、ただそれだけで。
 内容はこんなにも、絶望的なのに。・・・それなのに。
「誰からも納得されて祝福される、そういう恋愛が、また向井先生もできるじゃないですか。・・・僕との関係を終わらせることができたら」

「そうかな」
 一言だけ、でも明確な否定の意志をこめた声を返されて、長谷川は思わず顔を上げた。非難するような眼差しになったと自分で判った。しかし言葉が追いつかない。
 そんな長谷川に、近衛は短く笑ってみせた。
「俺は正直、この歳になっても恋愛ってよく判んないんだ。だから、同性同士だからダメだって言う気もないし、異性同士ならいいって言う気もないよ。そんなのは当人同士の問題だから。長谷川先生と向井先生のことも、二人にしか判らないことがたくさんあると思う。だけど、当人同士だから気づいてないこともあるって、俺は思うよ」
「・・・何、ですか。気づいてないこと、って」

 掠れた問いかけに対する、近衛の返答は簡潔だった。
「視線」
「え?」
 空いた自分のジョッキを掲げて店員に示しながら、近衛はなおも、事も無げに言う。長谷川の呆然としている表情なんて知らぬげに。
「二人とも、すごく切実な目でお互いのこと、目で追ってるだろ。・・・どっちかが気づきそうになったら、その前に逸らしちゃうから、知らないんだろうけど」

「そ・・・んなこと、」
 ある筈が。
 思わずそう言ってから、長谷川は慌てて言い足す。
「僕はそりゃ、そうかも・・・っていうか、そうですけど。でも向井先生は、」
「見てるよ」
 


→ BACK
→ NEXT




*拍手クリックで御礼SSに飛びます。
ぽちっと楽しんでいってくださいませ♪

*このお話が気に入ってくださった方はこちらも是非ぽちっと♪
ありがとうございます、大変励みになってます!

*    *    *

Information

Date:2014/08/17
Trackback:0
Comment:2

Comment

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014/08/17 【-】  # 

* Re: koさまv

(*^_^*)マークだ~v ありがとうございます♪

というか今日のニッコリマークは、司先生へ、ですね(^^)
良かったなあ、司くん。褒めてもらっちゃったよ~v

この人、割と器用貧乏っていうか、できて当たり前みたいに見られがちな人かなあと思うので。
普段駄目な子が頑張って結果出したら、周りもすごく絶賛してくれるじゃないですか。
でも、コンスタントに成果を出し続けてる人に対しては、同じ結果を出してても「ふーん」で流されちゃう、みたいなの、ありますよね。
司くんは後者だろうなーと思うので。
たまにガチで褒めていただけると、作者としても我が子のことのように嬉しい(笑)

やっぱり、司先生にも恋愛させてあげたいですよね!
優しい気持ちも切ない気持ちもいっぱい味わって、更にいい男になって欲しいところです。
そんな司先生のセラピーコーナー、延々と続きましたが、明日で一応終了。
次は長谷川先生が頑張る番です。
ふぁいとー!

2014/08/17 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://kisschoko.blog.fc2.com/tb.php/68-aa398595
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)