ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

白衣シンドローム(15)

 断言されて、心臓が震えた。今の自分の一言の効果を意識しているのかいないのか、近衛はなおも、長谷川の心臓を直撃する台詞をあっさりと口にする。
「俺が気をつけて見始めたのは、優莉ちゃんの件があってからだけど。でも、向井先生は長谷川先生のこと、ずっと見てる。むしろ、早く長谷川先生が止めてやった方がいいと思うよ。あんな目で見つめてちゃ、早晩誰かが不審に思う。・・・ま、それは長谷川先生にも言えることだけどね」

「・・・済みません」
 何故かは判らないまま、それでも長谷川は自然にこの一言を口にしていた。近衛も笑って受け止め、どういたしまして、などと言う。
 その後は近衛は、自分の経験した珍しい症例の話や、弟とその彼女の話などもしてくれた。長谷川は、あまり飲み食いはできなかったけど、それでも時々は笑ったりもできて。そんな自分に少しだけ安堵した。

 明日は向井先生と、ちゃんと話してみよう。
 そんな気持ちにもなれた。
 だから会計は強引に割り勘にしてもらって――本当はご馳走させてくれと言ったのに、近衛がどうしても頷いてくれなかったので――、そうして店の外で深くお辞儀をしたら、飲んでもないのにフラつきそうになって、近衛に笑われた上に腕を支えてもらったりなどして、また済みませんと口にしてしまう。
 この通り、最後まで近衛には、済みませんとしか言えなかったけど。
 でも、それで良かった気もしている。

 ありがとうの言葉は、向井先生ともう一度気持ちを繋ぎ合わせることができたら、そうしたら胸を張って伝えよう。
 そう決心したら、少しだけ気が楽になって、長谷川は一人夜空を見上げてみた。
 ネオンの反射で薄明るくさえ感じる空には、星なんかひとつも見えないけど。
 でも目に映らないだけで、きっとそこにある。
 ・・・向井先生の気持ちも。
 そうだと信じよう。そして、振り出しのロッカー室に戻ったつもりで、もう一度告白してみよう。
 僕の好きなひとは、あなただけです。と。

――この時。
 長谷川は自分の気持ちを支えることだけで精一杯で、目の前にいる近衛に対応する余力しか残っていなくて。
 だから、まるで気づいていなかった。
 そうやって思いを馳せていた、まさにその人物が、少し離れたところに立ちつくしていることなど。
 
 


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Date:2014/08/18
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2014/08/18 【-】  # 

* Re: koさまv

おお、(*^_^*)マークだ。良かった♪

けど、展開的には・・・まあ、待ってましたってとこですかね(笑)
油断して近所で済ませちゃいかん、という教訓ですね。壁に耳あり障子に目ありです。コワイコワイ。

そして、はい、こじれます(^o^)/
でも明日はお仕事小説が95%くらいかな~。
BLは最後の数行だけという。あはは、済みません!←先に謝っておこう

かくて長谷川先生の試練は続くのでした。
明日以降も声援を送ってやって下さい!(`・ω・)
2014/08/18 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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