ただ好きだという、この気持ち。

□ ごめんなさい大好きです □

魔法のスイッチ(9)

 学から受け取ったあの本に、小さな紙片が差し込まれたままになっているのを気づいたのは、それから丸二日経ってからのことだ。
 本のちょうど真ん中あたりの位置に挟まれた、短冊形のカード。二つ折りになっていて、上部に丸い切り込みがあり、書名や著者名や出版社名、バーコード、その他いろんな記号が印字されている。

 その丸い切り込みは通常、本から飛び出すような形で起こされているものなのだろう。
 しかし今回はペタッと倒れていて、本と一体化していたから、ただでさえ不慣れな学は抜くのを忘れてしまったらしい。

 どうしよう、とまず、司は思った。
 恐らくこれは、書店にとっては重要なものだ。
 大島にバレたら、学は叱られるんじゃないだろうか。
 取りあえずネットで調べてみたところ、それは売上スリップとか或いは単にスリップとか、そう呼ばれているものだと判った。商品管理の上で欠かせないものだ、ということも。

 ・・・返しに行こうか。
 そう思う傍ら、意気地なくも尻込みしてしまう自分を、司は自覚する。
 そもそも二日も経ってから気づくなんて、その間本を放置していたのがバレバレじゃないか。
 実際、放置していたわけだが。

 いや違う、と司は、誰にともなく弁解する。心の中だけで、一人虚しく。
 わざわざ取り寄せてもらった本なんだ。届く前も、受け取ってからは尚更、気にはなっていた。ただ、鞄から取り出すことができなくて、袋ごと持ち歩いていた。その間も頭の片隅からずっと離れなかった。
 あの時の学の表情、そして言葉。その全てとともに。

 ――近衛先生だったら受け止めてくれる気がして。勝手に俺、そんなふうに思っちゃって、

 本当に勝手だ、と、終いには八つ当たりしたくなる。
 こっちは恋愛なんか、久しくご無沙汰してるんだ。まして、男から告白されたのなんか正真正銘、人生で初めてだ。少しくらい手加減しろ。

 ――俺、近衛先生のことが好きです。俺と付き合ってください。

 言うだけ言って、それでこっちが絶句してたら一人で勝手に結論出して、挙げ句この言いぐさだ。

 ――今のナシです。済みません。忘れてください。ていうのが無理だったら、気にしないでください。
 
「・・・ったく」
 どれも無理だよ。
 バカ野郎。




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Date:2014/11/25
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