ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

ワンダフルライフ(80)

「それは違う」
 と。

 不意に向井が、強い口調でこう言った。続けて長谷川へと向き直ると、長谷川の両腕をぎゅっと掴む。
 続けて、軽く数度、揺すぶられた。宥めるように。諫めるように。

「違うよ。長谷川」
 底力のある声で向井は繰り返し、軽く上体を屈めると長谷川の瞳を覗き込んできた。
 その眼差しはひどく真剣で、そういう表情をしている向井はとても端正で、長谷川は背筋がぞくりとするのを感じた。
 そんな場合じゃないと思うのに、それまでと違う意味で心臓がざわめく。
 視界も五感も、身体中の全てが、目の前の人の方へ向いてひらかれてしまう。

 そこへ注ぎ込まれた一言は、一筋の清流となって、からからに乾いていた長谷川の中心へと真っ直ぐに落ちてきた。

「おまえだって悪くない」

「・・・・・・っ、」
 じわ、と目の前が霞むのが判って、咄嗟に長谷川はぎゅっと瞼を閉じた。ここで泣くのは絶対に嫌だと、強く思った。
 泣くのなら、向井先生と二人になってから、

「まーとにかくさ、座ってお茶飲みなって。ね、みんな」
 場違いなまでにのほほんとした声で言ったのは香葉だ。
 それは膝の後ろをガクッとやられたような効果をもたらし、反動でその場の全員――ただし香葉本人を除く――が脱力した、のだが。

 そこから向井は、いち早く立ち直った。
「じゃ、失礼します」
 誰にも有無を言わさぬ口調でこう言うと、手近な椅子を引いてまず長谷川を座らせ、その隣に陣取る。
 取り残された格好になった優莉は、やや不満そうに口を尖らせつつも、自分で座った。

 その様子を眺めながら、香葉が小さく笑った。そうして、向井と長谷川の前へとカップを押して寄越す。
 向井もまた、長谷川の手元近くにカップを引き寄せてくれた。持てるか、と目顔で訊かれ、大丈夫ですと答える代わりにカップを持ち上げる。最初は片手で、次いでもう片方の手を添えて。

 ぎこちない動作で口へと運んだロータスティーは、猫舌温度になってはいたものの、アドレナリンで荒れた喉にはヒリヒリとしみた。


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Date:2018/05/01
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Comment:2

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2018/05/01 【】  # 

* Re: ほんと暑かったーー!!

hちゃんこんにちは~♪

のんびりしてまーすむ(^o^)
今日は久々に植物ブログ更新したよー。久々ってか1年半ぶり(゚д゚)!
またのんきに、途切れ途切れに更新していけたらいいなーと思ってます(^^)

碧魚連! いいなあ!
ネットで買うと何千円とかするやつだよね♪ おさかなさん可愛いんだよなー、もりもり増えろー('∀')♪

さてさて、今日の向井先生、決めてくれました☆
あの一言は、私もずっと長谷川先生に言いたかったことだったので、ようやく伝えられたって感じ。
しばらく向井先生のターンが続きます。そののちに長谷川先生のターンも来る予定(これから書く!)

かっこわるくてヘタレな向井先生、見たいよねー!!! 見たいよー私もすごく見たいよー(; >д<)ジタバタ
向井先生は、かっこわるい姿の方が私は好きなので、こうかっこいいのばっかり続くと(´・ω・`)ってなってしまいます。
拍手SS、執事の密林さんを書きたかったけど、かっこわるい向井先生ネタに変更するかな♪
2018/05/01 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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