ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

ワンダフルライフ(86)

 ごく自然な動作で、向井がすっと姿勢を正した。そうしてまず一征に、次いで葉子へと目礼を送る。
 それは、短くて軽いものではあったけれど。
 万感の想いがこめられているのが、長谷川には判った。

 目の前がじわっと熱くなって、長谷川も慌てて目礼――というより顔を伏せた。そうして、イッセイさん姉ちゃんありがと、と小声で呟いた、その時。
「あああああうあー!」
 という、壮絶な泣き声が上がった。見れば優莉が身も世もなく号泣していて、長谷川はぎょっとして顔を上げた。

「何もう優莉ちゃん、すごい顔になってるよー?」
 香葉が呆れた声で言い、葉子がタオルタオルと唱えつつ席を立つ。その間にも優莉は滂沱の涙を流しつつ、しゃくり上げる合間に言葉らしきものを押し出そうとしていた。
「だ、ってあだし、ずっと見てぎだがらー! ひろぐんと、むがいせんせいの、あんなごどやごんなごとや、それがら、うえっうえっうえっ」
「って、ほーらやっぱり優莉ちゃん知ってたんじゃないのよー。ほら、タオル」
「ああ、ハナ垂れてる。はい、箱ティッシュも使いな」
 
 葉子と一征に世話を焼かれ、すごい音を立てて鼻をかんだりタオルで顔をごしごし拭いたりしている優莉を眺めやり、向井が嘆息をついた。
「まあ、あの子の場合はこういうオチだろうな」
 小声でぼやいている向井に、長谷川も小さく微笑み返す。
「でも多分、問題発言したいのをずっと我慢してくれてたんじゃないですか。優莉にしちゃ大健闘ですよ」
「だな」

 かくて二人で視線を交わして微笑み合っていると、香葉にめざとく見つけられて囃し立てられた。
「あっ、いちゃついてる! 何もうお兄ちゃん、向井先生の前だとなんか顔違わない? 妙に可愛くない!?」
「ばっ、そんなことない!」
 慌てて打ち消しにかかった長谷川の横で、にやにやしている向井。そんな二人の前に、テーブルを挟んで立ちはだかったのは葉子だった。そのまま、ばん! とテーブルに片手をつく。
「話戻していい?」

「・・・はい」
 思わず神妙に返事をした長谷川を、じろりと葉子は見下ろしてきた。
「大貴と向井センセが真剣に付き合ってるのは判った。・・・納得、は正直、まだできてないけど、理解はした。で、改めて確認したいんだけど、今日のこの会合の狙いは何だったの? 親に会う前のリハーサル? それともあたしたちを味方につけておこうって魂胆?」


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Date:2018/05/07
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2018/05/07 【】  # 

* Re: ずびずば

hちゃんこんばんは~♪
連休明けの月曜、すんごくしんどかった~(>_<)
あー仕事嫌いだわ。お局もクソ意地悪かったわ。今週も長くなりそうな予感・・やだやだ。

hちゃんが行ってる美容院、月曜が休みじゃないんだね! なんだか新鮮☆
私も今日は湿気にやられて、そろそろ行かねばならないと思・・でもイヤだー(美容院キライ)

さてさて、気を取り直しまして。
今日はなんつっても、優莉ちゃんの鼻声ですね!
ちょっといいシーンから始まったのに、うんうん、全部持っていきましたo(^o^)o

ちわわハグして、苛つく向井先生見てみたいよね(^o^)
私も長谷川先生にしがみつきたい! そして長谷川先生肩越しに、苛ついてる向井先生を見物したい!
ほほほ、愉快愉快♪
2018/05/07 【なか】 URL #uITap2kM [編集] 

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