ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

ワンダフルライフ(116)

「あ、えっと、はい、・・・じゃあまずは、診察室でできる検査をしてみましょう」
 戸惑いながらも、長谷川は目の前の患者に集中しようとした。車椅子の上でぐったりしている二十代の女性患者と視線を合わせ、小脳失調の検査を行う。

「僕のこの指、見えますか? ご自分の鼻を人差し指で触った後、僕の指に触ってください。僕は指を移動させますから、それを追いかけてみてくださいね。では始めます」
フィンガー・ノーズ・フィンガー・テストだ。引き続き、ヒール・シン・テストも。
「支えてますから、診察台に横になって――ゆっくりでいいですよ。・・・はい、じゃあ、右足の踵を左足の膝に付けてみてください。そのまま下まで滑らせて・・・下まで行ったら、また上へと滑らせて、膝まで戻して。それをあと二回、繰り返してみてください」
 
 検査する長谷川を、泉は壁際まで退いて眺めていた。
 その視線が気になったのは最初だけで、長谷川の意識はすぐに患者の方へと切り替わった。
「菊池先生のご指摘どおり、神経症状が顕著ですね。インフルエンザ脳症が疑われます。このまま入院していただき、詳しい検査をして、点滴加療を開始したいと思います。ご家族に連絡はつきますか。・・・いえ、脳症というと深刻に聞こえますが、早期に適切な治療をすれば完治します。ベッドを抑えますので、中待合で少しお待ちください」

 受話器を取り上げ、ベッドコントロールを担当する部署に電話をかける。結果、総合診療科病棟に無事、ベッドを確保できた。
 迎えに来た病棟看護師に患者を委ね、長谷川は泉へと向き直った。
「神経内科ともコンサルして、慎重に加療していきます。メチルプレドニゾロンのパルス療法が第一選択になるかと考えますが、頭部CTや脳波検査の結果も――あ、」

 これはお父様に返書の形でご報告した方がいいですね、と、長谷川が恐縮した口調で言うと、泉はくしゃりと笑った。
 すると急にやわらかな印象になり、思わず長谷川は彼女をじっと見つめてしまった。

「ええ、そうしてください。今長谷川先生が仰ったこと、一応理解できるけど、今ひとつピンと来ないから。父ならよく判るんでしょうけど」
 私、専門は外科なんです。そう彼女は続けた。
「手術は好きだけど、勤務医として手技を磨いてもしょせん頭打ちだし、今後の人生を考えると、早めに結婚して子どもを産んじゃった方がいいなと思って。それで実家の内科医院に戻ったんです。旦那さんに内科を引き継いでもらって、私が外科をやって、菊池内科外科医院を標榜するの。悪くないでしょう?」
「・・・はあ。あの、」


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Date:2018/06/06
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2018/06/06 【】  # 

* Re: 原始人上等(σ≧▽≦)σ

hちゃんこんばんは~♪

スマホの電池の寿命は2年なのかー! 短いねえ(>_<)
けど確かに、消耗品といえばそうかも・・。 しかしそれにしても短い~(泣)

機種変更って億劫なイメージがあって、私の中ではハードル高いわ~。
新しいのが出るとすぐ乗り換えれる人すごいと思う(>_<)

とにもかくにも、よく考えて! というほどのことでもないのかもだけど、よく考えて決めるだよ(^^)

長谷川先生の毛事情と乙女心については、うんうん、向井先生きっと判ってて知らん顔してるね(^o^)
いい夫婦です。むふ。

さてさて、泉ちゃん、今日も元気にまくし立ててます♪
あと、お医者さんらしい長谷川先生を書いたの久しぶりだった(^o^)

司先生の恋のお相手として考えてた時は、もっとキツイ感じの人だったんだけど、年月がたったら少し丸くなってました(^-^;
今となっては、司先生のパートナーは学くんしか考えられないけど、いろんな可能性があったんだねー。

まーでも、カッコいい女というのも大変な気がするよ(^-^;
泉ちゃんにも癒してくれるパートナーが見つかりますように☆
2018/06/06 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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