ただ好きだという、この気持ち。

□ 今だけ在ればいい。 □

ワンダフルライフ(117)

 その節は、と、ぼそぼそした口調で言いながら、今更と思いつつも長谷川は泉に丸椅子を勧めた。
 すると泉は、腰かけるのと長谷川を遮るのとを同時にやってのけた。つまり、いいんですと言いながら椅子に座ったわけだが、その口調は至ってさばさばしていた。

 更に泉は、同じ口調のままで言葉を継ぐ。
「お見合いを断られたことくらい、別に何とも思ってません。ただ、長谷川先生は私のプロフィールも写真も、一通り見てるでしょ。なのに私は長谷川先生の名前と勤務先と診療科しか知らないって、不公平だとは思ってて。一度、お顔を見てみたかったんです。・・・あ、」

 患者さんの付き添いのついでですよ、あくまでも。そう付け加えた声音が真剣だったので、長谷川もつい笑ってしまった。
 その後、真面目な顔に戻ってこう答える。
「判ってます」
 すると、泉もほっとしたように微笑した。それから、改めてまじまじと長谷川を見やる。

「えーと、既にパートナーがいる? ってことでしたよね? 残念だな。長谷川先生っていい旦那さんになりそうなのに。ま、そういう人から売れていくものですよね、世の中って。それに外科の女医なんて、恐いとかキツイとか言われて敬遠されがちですし。確かに私も優しい性格じゃないし」
「は、あの・・・」

 返事に困っている長谷川に、泉はもう一度笑いかけた。それから、ガタリと椅子を鳴らして元気よく立ち上がる。
「返書は後で郵送していただければ結構です。おおよそのことは私から父に伝えておきますので。これを機会に、よしなにお付き合い頂けると幸いです。あ、もちろん、診療の上で、ですよ」
「・・・はい。こちらこそ、宜しくお願いします」

 半ば押し切られる形で、呆然とそう返してから。
「――あの、菊池先生!」
 さっさと診察室を出て行こうとしていた泉を、長谷川は無意識に呼び止めていた。怪訝そうに振り返り、開けかけていた扉をまた閉めた泉を前に、長谷川は立ち上がった。
 この人には、きちんと話しておきたい。そう思った。

「・・・男性なんです。僕のパートナーは。同じ診療科の先輩医師で、ゆくゆくは共同開業する予定でいます。・・・あの、だから、あなたが女性医師だからとか性格がどうこうとか、そういうことでお断りしたんじゃないんです。それだけ、どうしてもお伝えしたくて」


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Date:2018/06/07
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2018/06/07 【】  # 

* Re: 頑張るちわわ!

hちゃんこんばんは~♪
梅雨入りしちゃったよー(>_<)
昨日とおとといは雨だったけど、今日は半端に晴れて暑かったです(;_;)
乾燥除湿器、いいだろねー! 乾燥という言葉の響きにクラクラするわ☆

さてさて、泉ちゃん。言いたいことをきっちり言える強い人、憧れるわ♪
んで長谷川先生も、言わなくても別にいいのに言っちゃうんだよね(^o^)
律儀というかなんというか♪
さあ、泉ちゃんの反応はいかに! 明日をお楽しみに!
(ちなみにもうすぐ最終回ですよ☆)
2018/06/07 【なか】 URL #hc9S4FeM [編集] 

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