ただ好きだという、この気持ち。

□ ごめんなさい大好きです □

魔法のスイッチ(20)

「でも、」
 と司はつい反論してしまう。駄々をこねる子供みたいな口調で。
「付き合ってくれって言った」
「はい」
「それはつまり、そう期待してるってことじゃないのか? 少なくともそう希望してる、ってことなんじゃ――」

 そうですね、と長谷川は言う。穏やかな声と眼差しで、司を真っ直ぐに見つめてくる。
「でも、こうも言ったんですよね。今のナシです、って」

 ――済みません。忘れてください。ていうのが無理だったら、気にしないでください。
 学の、ちょっと焦ったような、だけど笑おうとしているような、そんな声音がいきなり耳に蘇った。
 ズキンと胸の中心が痛む。まだダメだ、と文字通り痛感する。まだかさぶたにすらなってない。ちょっと刺激されただけで、傷口はこんなにも容易くひらいてしまう。

「彼の気持ち、僕が代弁なんかできるわけないので、これはただの当て推量ですけど。ただ僕も、同じような切羽詰まり方で向井先生に告白したから」
 というか、と言って長谷川は照れたように笑った。
「僕の場合は、自分の気持ちをぶちまけただけでした。学くんみたいに、相手と向き合う形で想いを告げたり、まして願いを言葉にしたりできなかった」

 ただ、と長谷川は言葉をつなぐ。穏やかな表情で、語尾に微笑を漂わせながら。
「今のは忘れてくださいって、先回りにしてすぐ言ったところは一緒です。しかもそれに続けて、僕がこう想ってることだけ覚えててください、なんて言い足したから、向井先生にはその場で怒られました。忘れればいいのか覚えてていいのかどっちだ、って」

 だから、学くんの方が偉いです。
 そう続けた長谷川の、素朴な口調が胸の傷口にしみた。気づいたら司は、スリップをぎゅっと握りしめていた。
 折れ曲がってしわくちゃになりかけているのが目に映って、力を抜こうとしたけれど、うまくいかなかった。
 そんな司を、長谷川は淡々と、しかし容赦なく追い込んでいく。

「というか彼は、場数を踏んでるんだと思います。今までもこんなふうに、恋を諦めてきたんじゃないでしょうか。今回も自爆するのが判ってて、それでも言わずにいられなかっただけなんじゃないかな。付き合いたいっていうのは、確かにそうなったらいいなって一縷の希望から出た言葉でしょうけど、」
 でも本当は、と長谷川はなおも言う。
「自分を納得させようとして、そう言ったんじゃないか、って」
  



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Date:2014/12/17
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