ただ好きだという、この気持ち。

□ 読み切り □

スローバラード(17)

「飛鳥さ、」
 進藤が何か言いかけたけれど、飛鳥はそれを遮った。もう自分が何を言っているのかよく判らなくなっていたけれど、それでもなおも言葉を叩き出した。

「左手だけだっていいじゃないですか。こんなに上手に字が書けるようになったんだ、ピアノも触ってあげないと不公平です。大丈夫、俺、傍からずっと離れませんから。痛くなったり苦しくなったりしたらすぐケアしますから」

「…………」
 進藤はしばらく黙ったまま、飛鳥の顔を見つめていた。
 気づいたら飛鳥は肩で息をしていて、しかも汗をかいていた。全力疾走したみたいに。
「……うん」
 そして。
 進藤はこくりと頷き、小さく微笑した。
 それから左手を挙げ、飛鳥の頬に触れてきた。

「そうだね。行こうか。……行くよ。だから泣くな」
「泣いて、ません」
「泣いてるよ。ほら」

 目尻を親指でぬぐわれて、飛鳥は思わず目を閉じた。その拍子に熱いものがまぶたでちぎれて、あれっ、と思った。
 泣けないでいた筈なのに。
 そもそも泣く権利なんか俺にはないのに。
 ……泣くな俺。バカ野郎。

「飛鳥さんて、映画とかドラマとか見ててもすぐ泣くでしょ」
「そんな、こと、ありません、よ」
「嘘だー。絶対、ティッシュ箱を次々使い果たすタイプ」
「そんなこと、ありません、てば」

 


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Date:2015/12/16
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